(社説)旧統一教会 政治との関わり解明を
安倍元首相を銃撃した容疑者の動機や背景が、徐々に明らかになってきている。母親が宗教団体に巨額の献金をしたことで人生を狂わされ、教団の「シンパの一人」と位置づけた安倍氏に矛先を向けたようだ。
身勝手な言い分であり、到底許される行いではない。だが、この宗教団体・世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の活動はかねて問題視され、被害者は多数にのぼる。凶行に至る経緯とともに、教団と政治とのかかわりを解明して、今後の対策につなげなければならない。
教団は、日本では1960年代から独自の教義を掲げて信者を増やし、反共産主義を唱える政治組織・国際勝共連合とともに勢力を広げた。80年代以降、霊感商法や合同結婚式への批判が高まり、安倍政権下の7年前、名称変更の申請が文化庁に認められた。
元信者らが起こした民事裁判では、教団側の非を認める判決が30件以上言い渡されている。正体を隠しての勧誘や、判断力を失わせて高額のつぼや印鑑などを売りつけるやり方が違法とされ、特定商取引法違反で有罪となった関係者も多い。
全国霊感商法対策弁護士連絡会によると、確認できた金銭被害は昨年までの約35年間で総額1237億円を超す。それでも氷山の一角に過ぎないという。
教団の伸長を支えた大きな要因として、連絡会が挙げるのが政治家の存在だ。
教団が関連する集会に参加したり、祝辞を寄せたりする。それが「お墨付き」となり、人々が信頼し、被害が広がる――。
連絡会はそう指摘し、政治家に対し、教団の支援を受けたり運動に賛同するあいさつを出したりしないよう繰り返し求め、昨年9月に教団の「友好団体」にビデオメッセージを送った安倍氏にも公開抗議文を出した。容疑者はこのメッセージを見たと供述しているという。
この団体には安倍氏名義の祝電が06年にも送られ、当時官房長官だった氏の事務所は「誤解を招きかねず、担当者にはよく注意した」とコメントした。なのになぜ、昨年は自身の映像・音声という、より踏み込んだ対応になったのだろう。
選挙活動の組織的支援や政策への介入など、教団と政界の関係は種々取りざたされる。岸信介元首相以来の付き合いといわれる自民をはじめ、各党・各議員は自ら調査し、結果を国民に明らかにする必要がある。
入信した本人、親族、いわゆる2世信者など、苦悩を抱える人は少なくない。問題の放置が被害を深刻化させてきた。支援の手をどう差し伸べていくか、社会が直面する重要な課題だ。
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- 【視点】
非常に月並みなことで恐縮ですが、やはり気になるので一言コメントしたいと思います。本件に関しては、報道のあり方についても少なからず疑問が寄せられており、それについても応えるべきではないかと思います(管見の限り、ちょうど本日、毎日新聞にも同様
- 【視点】
曽我部さんのコメントは、新聞社のような「大きなメディア」に関わる人たちに届くべき、大変重要なメッセージだと考えます。 今回の参院選では、YoutubeやSNSなど、いわゆる「小さなメディア」を駆使した候補者や党が議席を獲得しました。そ