(社説)生態系の保全 未来への責任を果たす

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 2030年までに陸と海のそれぞれ30%を保全する――。

 「30by30」と呼ばれる国際目標がある。どんな施策を講じてこれを達成し、貴重な生態系を守るか。日本も確実にその役割を果たさねばならない。

 目標は、昨年の主要7カ国首脳会議で合意され、今年12月にカナダで開かれる生物多様性条約締約国会議(COP15)での採択が検討されている。

 生物多様性と生態系の現状を科学的に評価する国際組織(IPBES)が今月上旬にまとめた報告書によると、世界は食料、医薬品、エネルギーなどとして、約5万の野生種から便益を得ている。

 だが、将来も食べたり利用したりできる野生生物は34%にとどまると推測。全漁獲量の3分の1は乱獲というべき状態にあり、木材なども含めた違法な取引は最大年間2千億ドル(約27兆円)近くに及ぶという。

 人類の「持続可能性」が問われる数字だ。報告書が指摘するように、価値観の転換と社会の変革が求められる。

 「30by30」に向けて、国内では関係省庁が具体策を詰める作業を進めている。

 30%は高い数字だが、これまでに陸域の20・5%、海域(領海と排他的経済水域)の13・3%が保護地域に指定されており、この拡大をめざす。企業などが持つ水源林、里山、緑地公園、河川敷といった自然が守られているところを取り込み、生物多様性の保全に役立つ地域に位置づける。海は漁業などとの両立が引き続きの課題だ。

 数字をただ積みあげて30%に近づけるのではなく、継続して管理し、着実に生態系を守る制度にすることが大切だ。企業や地域住民が進んで協力しようと思える「メリット」を提供することも必要になろう。

 気候変動対策との調整という課題もある。保全区域が太陽光発電風力発電の適地とされることは十分考えられる。場所の決め方、区域指定を解除する要件、それにかわる新たな区域の指定に関する手続きなど、柔軟に対応できる仕組みを用意しておくことも欠かせない。

 取り返しがつかなくなる前に有効な手を打ち、生態系の損失を食い止め、回復させていく。今に生きる私たちの責務だ。このまま陸や海の資源を使い、枯渇させることは、未来の世代に対する背信に他ならない。

 気候変動対策と同じく、それぞれの国・地域の戦略、今日まで自然の恵みを享受してきたところとそうでないところとの対立など、難題が待ち受ける。政府には、目標の達成に早期に道筋をつけ、国際社会で議論をリードすることを期待したい。