(社説)IR投票否決 維新は住民に向き合え

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 看板政策だった「大阪都構想」では、大阪市民による住民投票で反対多数となっても、再度市民に諮る投票を行った。一方、カジノを含む統合型リゾート(IR)誘致を巡って府民が求めた住民投票は、門前払い。維新の対応はご都合主義というほかない。

 大阪府議会がIR誘致の是非を問う住民投票条例案を否決した。市民団体の案に、過半数の議席を持つ「大阪維新の会」が反対し、公明党も同調した。

 大阪維新の代表でもある吉村洋文大阪府知事は、議決に先立ち「住民投票に意義を見いだしがたい」と意見を述べた。IRの整備計画は府民を代表する府議会で可決され、国に認定申請済みだからだという。

 理解しがたい。今回の住民投票請求は、有効分だけで20万筆近い多数の署名に支えられて実現した。その重みを正面から受け止めるのが筋ではないか。

 府民が動いた大きなきっかけは、大阪府・市が否定してきたIR事業への公費投入が明らかになったことだ。市は昨年末、建設予定地の液状化・土壌汚染対策などに790億円を投じると発表。住民説明会などで数々の疑問や懸念が出たが、納得できる回答はいまだない。

 カジノがギャンブル依存症を増やす懸念に加え、新型コロナパンデミックが事業にもたらす影響も不透明だ。立ち止まって考え直そうという当然の声に維新は耳を傾けなかった。

 大阪維新を母体に結成された国政政党「日本維新の会」は、まもなく旗揚げから10年になる。昨秋の衆院選で躍進、今月の参院選でも勢いは続き、比例区の得票で立憲民主党を上回った。次の衆院選で野党第1党になることを目標に掲げる。

 ならば、政策面でも候補者選びの面でも、より責任ある態度で、全国の有権者にしっかりと向き合わねばならない。

 「大阪の政党」というイメージから脱しようとしてか、維新は参院選の公約で国家観を示すことに注力した。安全保障分野では、憲法9条への自衛隊の明記、GDPの2%を目安とする防衛費の増額のほか、核共有の議論の開始を打ち出した。

 戦争被爆国としての日本の歩みを覆しかねない問題だというのに、党内論議を尽くしたうえでの発信にはみえない。吉村氏らの街頭演説も、子育て支援策など大阪での実績の訴えが中心だった。保守票にアピールする思惑が先に立ったのなら、無責任のそしりを免れまい。

 国・地方を問わず、維新の議員や首長、候補者の問題発言や不祥事も目立つ。政治家としての資質を吟味する、党のガバナンスも厳しく問われる。