(社説)タリバン1年 人道危機を捨て置けぬ

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 武力で実権を握ってから1年。いまだ政府として承認する国がひとつも現れていないことが、全てを物語っている。

 アフガニスタンのイスラム主義勢力タリバンである。

 昨年8月15日に首都カブールを制圧して旧政権を倒した際、さまざまな約束を行った。

 多民族国家を反映した包括的な政府をつくる。旧政権の関係者には恩赦を与える。女性の人権もイスラム法の範囲内で尊重する。アルカイダなど国際テロ組織に国土を使わせない。

 だが、いずれも果たされていない。国際社会への裏切りであり、責任は重大だ。内部で、対外融和を唱える勢力と強硬な武闘派とのせめぎ合いもあるようだが、言い訳にはなるまい。

 閣僚はほとんど最大民族パシュトゥン人が独占している。国連によると、旧政権の職員や治安部隊など少なくとも160人が裁判なしで殺害された。

 女性は単身での遠出が禁じられ、中高生年代の女子生徒の通学は認められていない。報道機関の半分以上が閉鎖されるなど言論の自由への弾圧も激しい。

 米国は先日、アルカイダの指導者をドローン攻撃で殺害した。首都中心部の住宅街にいたことから、タリバンにかくまわれていた疑いが濃厚だ。

 これでは国際社会で孤立するのも当然といえよう。一方で、取って代わる政治勢力が存在しないことも事実だ。部族社会の価値観が色濃く残るこの国で、タリバンが根を下ろした存在であることにも留意が必要だ。

 長い戦乱で疲弊したアフガニスタンの経済は崩壊状態だ。歳入の半分を占める国際援助を失い、在外資産も凍結されたからだ。多くの人が収入のあてがなく、娘の身売りや臓器売買など悲惨な状況が伝えられる。

 食料不足も深刻で、人口の半数にあたる約1900万人が深刻な飢餓に直面している。こうした人道危機から目を背けることは出来ない。

 日本を含め各国は国連機関やNGOを通じて支援を続けているが、現場を実効支配する組織と反目したままでは限界もある。正統性は認められないが、タリバンと実務的な対話を続ける必要はあろう。

 国民生活を立て直す目的を共有しながら、世界に窓を開くことの重要性や、国際規範となっている人権などの価値に理解を促す。その積み重ねでタリバンとの向き合い方を模索していくほかない。

 同時に、戦乱やタリバン統治をのがれて国外に暮らす難民を支えるための目配りも欠かせない。将来、国民の融和が実現したときには、国家再建の力になるはずである。