(社説)五輪汚職 腐敗の祭典だったのか

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 「平和の祭典」を私利私欲を満たす道具にしていたのなら、到底許されない。捜査当局による徹底した解明を求める。

 東京五輪パラリンピック大会組織委員会の理事だった高橋治之(はるゆき)容疑者を、東京地検受託収賄の疑いで逮捕した。

 紳士服大手のAOKIホールディングス側から、スポンサー契約やライセンス商品の販売で便宜を図ってほしいとの請託を受け、総額5100万円を受け取った疑いが持たれている。

 高橋容疑者は広告大手電通の元専務だ。14年に組織委理事に就く一方、17年秋には自らが代表を務める会社がAOKI側とコンサルタント契約を結んだ。元理事は金の授受はこの契約に基づくもので、五輪とは関係ないと説明しているという。

 AOKI側は前会長の青木拡憲(ひろのり)容疑者ら3人が贈賄容疑で逮捕された。元理事への依頼内容を社内でまとめていたとされ、地検が資料を押収している。スポンサーの募集や公式商品の審査などに元理事の古巣の電通がどう関わっていたかも含め、五輪ビジネスの実相を明らかにする必要がある。

 容疑どおりなら、癒着を見逃した組織委も責任を免れない。

 東京五輪で組織委が国内から集めた協賛金は、過去最高の3700億円にのぼったという。組織委は今年6月に解散し、清算法人が残務整理にあたっているが、「大変驚いている」とひとごとのようなコメントを出して済む話ではない。

 開催都市である東京都などと連携して、AOKI関連以外のスポンサー契約やライセンス商品の販売などについても、同様のおかしな話がないか、調査・検証するべきだ。

 巨額の資金が動く五輪は、腐敗の温床となるリスクを常にはらむ。東京五輪をめぐっては、招致活動を率いた竹田恒和・前日本オリンピック委員会会長に贈賄疑惑が持ちあがった。だが同委は通り一遍の調査をしただけで、いまは30年冬季五輪の札幌招致に力を注ぐ。

 人々の疑問や不信に誠実に向き合わず、けじめをつけるのに後ろ向きの組織がいくら旗を振っても、招致熱が盛り上がらないのは当然ではないか。

 国際オリンピック委員会の倫理規程は五輪関係者に対し、「大会に関わるいかなる形態の報酬、手数料、隠された便宜、サービス」についても要求・受領・提供を禁じている。

 コロナ下で強行開催された東京五輪は、人間の尊厳や反差別、団体の良好なガバナンスなどをうたう五輪精神が空文化している現実を映し出した。

 今回の逮捕によって、新たな「現実」がまた一つ加わった。

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