(社説)杉田政務官 首相は差別を許すのか

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 性的少数者を差別したり、ジェンダー平等を否定したり、人権感覚が疑われる言動を繰り返す人物を、なぜ政府の職に就けたのか。「多様性の尊重」は口先だけで、差別を容認していると批判されても仕方あるまい。岸田首相の責任を厳しく問う。

 先週の内閣改造に伴い、自民党杉田水脈(みお)衆院議員が、総務省政務官に起用された。大臣、副大臣に次ぐポストで、行政評価や統計などを担当する。

 杉田氏は18年、月刊誌「新潮45」への寄稿「『LGBT』支援の度が過ぎる」で、同性カップルを念頭に「子供を作らない、つまり『生産性』がないのです」などと持論を展開。後に「不適切な記述」と認めたが、謝罪や撤回はしなかった。

 一昨年には、性暴力対策の予算などを議論した党の会議で「女性はいくらでもウソをつける」と発言。謝罪や議員辞職を求めるネット署名が13万筆以上集まったが、女性を蔑視する意図はなかったとブログで一方的に発信しただけだった。

 世論や野党の批判を受けて、釈明はするものの、本心では反省などしていないのだろう。政務官就任の会見で、寄稿に対する現在の見解を尋ねられても「ブログを確認して欲しい」。「過去に多様性を否定したことも、性的マイノリティーを差別したこともない」というに至っては、白々しいにも程がある。

 次世代の党に所属していた14年の衆院本会議で、杉田氏は「男女平等は、絶対に実現しえない、反道徳の妄想だ」と述べ、男女共同参画という考えを真っ向から批判した。

 こうした価値観の持ち主と知ったうえで、自民党に引き込んだのが安倍元首相やその側近だ。衆院選比例中国ブロックの名簿で優遇され、当選を重ねた。杉田氏の処遇で、党内外の保守層にアピールもできるという読みがあったのだとしたら、見当違いである。

 ほかにも、LGBT理解増進法案を議論した昨年の自民党の会合で「生物学的に自然に備わっている『種の保存』にあらがってやっている感じだ」と述べたとされる簗(やな)和生衆院議員が、文部科学副大臣に起用された。

 政治主導をめざして導入された副大臣・政務官の役割が形骸化し、一人一人の資質や適性を吟味するより、当選回数や派閥均衡を重視した人選の弊害もあるに違いない。

 首相は1月の施政方針演説で「多様性が尊重される社会」を掲げ、先の参院選の直後にも、同じ目標を語っている。今からでも人事を見直し、選択的夫婦別姓同性婚など、具体的な制度の実現に向け、指導力を発揮しなければならない。

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    常見陽平
    (千葉商科大学准教授・働き方評論家)
    2022年8月19日7時3分 投稿
    【提案】

    ■朝日新聞は杉田水脈の政治家としての実績を真正面から検証せよ  朝日新聞が闘争の火柱を断固として噴きあげている。記事だけでなく、天声人語、さらには本日の社説と杉田水脈政務官登用問題について怒りの炎で包囲している。言っていることはいちいちま

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