(社説)電力システムの改革 課題見渡し、着実に前進を

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 社会や経済の営みに不可欠な電気をめぐり、異例の事態が相次いでいる。需給逼迫(ひっぱく)による停電の懸念、電気代の急上昇、新規参入した事業者の撤退――。さまざまな現象の背後で、何が起きているのか。

 日本の電力システムは近年、自由化を柱にする制度改革と、再生可能エネルギーによる脱炭素化が並行して進んできた。いわば二重の過渡期にある。その試行錯誤の途上で、ロシアのウクライナ侵略に伴う化石燃料の高騰や供給不安が加わった。

 ■自由化の進展と成果

 エネルギーに求められる経済性、環境性、安定供給の三つをどう並び立たせるか。複雑さを増す方程式を解くためには、改革の成果を確認しつつ、不備や課題を見渡して原因を切り分け、手当てを急ぐ必要がある。

 競争を通じて効率化や創意工夫を促し、料金引き下げやサービス向上を図る――。電力自由化はそんな理念を掲げ、2000年代に本格化した。大手に認められていた地域独占の立場は、徐々に弱められた。

 さらに、11年の福島第一原発事故で、従来の電力体制の問題点があらわになり、改革が加速した。同時に、エネルギー政策は安全性の確保が大前提であることも明確化された。

 その後、大手の送配電部門の別会社化や、各種の取引市場の整備などが矢継ぎ早に進んだ。小売りは16年に全面自由化され、家庭向けの「新電力」の参入が700社を超えた。

 成果はどうか。

 足元の料金の高騰を前に、自由化に懐疑的な主張もある。だが、主な原因は輸入燃料の値上がりだ。そうした変動や再エネ支援の賦課金を除いた部分を見れば、この20年間で大きく下がっている。ガスとのセット販売といったサービスも広がった。再エネは、欧州などよりペースが遅いとはいえ、拡大が続く。

 ■市場と政府の役割は

 一方で、課題も目につく。

 東京電力の管内で今年起きた需給逼迫の直接の原因は、地震被害や予想外の天候だった。だが背景には、競争にさらされた大手が採算性の低い火力発電を減らしてきたことがある。脱炭素化で火力に投資しにくくなったことも、拍車をかけた。

 小売りと発電事業者が取引する卸電力市場では、逼迫時の価格急騰が珍しくない。燃料値上がりと相まって、新電力の経営を圧迫し、昨年以降、約40社が倒産や事業停止に至った。競争による一定の淘汰(とうた)は当然とはいえ、急な撤退が重なれば利用者が困ることになる。

 電気は生活必需品であり、ためておきにくいという特徴もある。長期の課題や、まれにしか起きない問題は、単純な市場任せでは解決が難しい。一方で、高コストで非効率な体制に逆戻りしては本末転倒だ。

 肝要なのは、競争を機能させる部分と、市場の仕組みづくりや規制など政府が担う部分を見定め、それぞれの役割を十分に発揮させることである。

 ■制度改善が急務に

 安定供給の向上には、長期の投資が報われ、過不足のない供給力が確保される仕組みが欠かせない。そのために、将来の発電能力を取引する「容量市場」が設けられたが、実際の供給に結びつくのは2年後からだ。欧米でも模索が続く課題だけに、政府は広く知見を集め、改善に生かさなければならない。

 同時に、小売り、送配電、発電の各事業者に、供給面でどんな責任や役割を担わせるかも、改めて整理する必要がある。

 経済性の面で重要なのは、卸電力市場の改善だ。価格急騰をめぐり、専門家や新電力には「電源の大半を持つ大手に有利な仕組みが残り、公正な競争環境が整っていない」との指摘がある。透明性を高めるため、大手にいっそうの情報開示を徹底させるべきだろう。

 環境性では、炭素税排出量取引を導入し、市場の働きも生かして再エネの拡大を加速させたい。原発も脱炭素電源だが、解決が難しい放射性廃棄物や安全対策の問題がある。着実に減らしていくべきだ。

 課題は尽きず、情勢の変化も速い。常に点検を重ねつつ、望ましい姿に向けて、歩みを進めていかなければならない。

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