(社説)コロナと首相 その場しのぎ 招く不信

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 新型コロナの感染者すべてを把握するのをやめ、高齢者や重症化リスクのある人などに絞って、医療機関が保健所に届け出ることを認める。24日の会見で岸田首相がそう表明した。

 現場の事務負担を減らそうという狙いはわかる。驚いたのは、これまでどおり全数届け出とするか、限定的な届け出に切り替えるかを、都道府県の判断に委ねるとしたことだ。

 地域の事情に応じて柔軟に、と言えば聞こえは良い。しかし発生届は、感染者を必要な医療につなぐとともに、流行状況やウイルスの特徴をつかむためにある。専門家が求めた全数把握に代わる仕組みも示されていない。基本的な資料の扱いを自治体任せにして、どんな感染症対策を講じるというのか。自治体からも批判が出ており、その場しのぎの感は否めない。

 政府は来月半ばにも、全国で統一する方向で調整するという。混乱を速やかに収拾して、感染動向の見逃しや見誤りがないよう、データの処理・分析に万全を期さねばならない。

 事務量が減っても、現下の医療逼迫(ひっぱく)が解消されるわけではない。ところが首相から、態勢の立て直しに向けた具体策は打ち出されなかった。国民の生命と健康を守るという、政府の最も大切な使命を全うしてほしい。

 あわせて水際対策の緩和が決まった。入国時に求めている72時間以内の陰性検査証明に代えて、ワクチンの3回接種証明を使えるようにするという。

 検査証明の取得が難しい国もあり、帰国・入国者の重荷になっていた。国内でこれだけウイルスが広まるなか、提出を義務づける意味はほとんどなく、見直しは理にかなう。

 ただし、新たな変異株が侵入するリスクは依然としてある。ウイルスのゲノム解析など、国内での監視態勢の維持・強化は引き続きの課題だ。

 「原則10日間、無症状でも7日間」となっている感染者の療養期間も、短くする方向で検討されている。先月、濃厚接触者の待機期間を短縮した際は、政府の説明が不十分で感染拡大への不安や疑問が出た。反省を踏まえた丁寧な対応が必要だ。

 首相は「ウィズコロナ(コロナとの併存)に向けた新たな段階への移行について、検討が順調に進んでいる」と述べた。感染が落ち着いていた時期に次の手を打たず、現在に至ったことへの反省はなく、その楽観的な物言いは国民の意識との溝を浮き彫りにした。

 厚生労働省の専門家会合では「早期に感染者が減少する可能性は低い」との見通しが示された。首相は危機感をもってコロナ対策の先頭に立つべきだ。

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    長野智子
    (キャスター・ジャーナリスト)
    2022年8月27日8時49分 投稿
    【視点】

    私自身この夏海外に行ったのだが、自身の経験からいうと入国時に求めている72時間以内の陰性検査証明と、MySOSというアプリはかなり機能的で感染リスクの軽減に効果があるように感じた。旅行先が米国だし、検査証明の取得がかなり簡易であったことは大