(社説)園児バス放置死 悲劇なぜ繰り返された

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 静岡県牧之原市認定こども園で、送迎バスの車内に3歳の園児が置き去りにされ、熱射病で亡くなった。昨年7月に福岡県中間市の保育園で同様の事件があり、厚生労働省などが安全管理の徹底を求めていたさなかだった。

 施設の運営者や、最前線に立つ職員には、大切な命を預かる重い責任がある。まずそのことを改めて確認したい。加えて、国や自治体も、安心して子どもを預けられる環境が実現できているか、課題を洗い出す必要がある。

 バスを運転していたのは理事長兼園長(73)で、本来の運転手は休みだった。普段は運転手が園児が残っていないか確認していたが、園長は不慣れで思い至らなかったという。

 同乗した職員も、乗車名簿と降車した園児の照合をしないまま、管理システムに登園済みと登録していた。クラス担任らは園児が欠席したと思い込み、システムで登園扱いとなっていたことを確認しなかった。

 福岡での事件を受け、同園でも安全管理の徹底を職場で申し合わせたという。だが、降車時に車内を複数の目で確認するといったマニュアル改定はしていなかった。登園するはずの子がいない場合、保護者に確認するルールもあったが、連絡のないまま休む例もあり、おろそかになっていたと説明している。

 異変に気づける場面はいくつもあった。当たり前の行動がなく、重大な結果を招いたことが悔やまれる。現場の意識改革とともに、取り決めやマニュアルの実効性と、現場への周知について、総点検を急ぐべきだ。

 政府は、今回の事件を受けて改めて通知を出した。登園時や散歩などの園外活動の前後で、子どもの数を二重に確認する態勢などを求めている。ただ、保育現場は慢性的な人手不足だ。態勢強化に必要な支援についても考えてほしい。

 車内に残された人をセンサーで感知して知らせるといった仕組みも開発されている。人的なミスをカバーするため、そうした技術の活用も考えたい。

 福岡県は昨年の事故を受けて独自の指針を設け、運用ルールが職員に周知されているかなどを定期監査で点検している。そうした事例を全国で共有し、広げることも重要だ。

 先の国会で成立した改正児童福祉法では、来年度から保育施設に安全計画の策定を義務づけた。送迎バスについても計画にしっかりと位置づけ、指導・監督の対象にすべきである。

 保育の受け皿が増えるなか、人々が何より望むのは、安心して預けられる場所だ。こんな悲劇を繰り返してはならない。

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