(社説)官僚の不人気 視野広げ分析と対策を

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 国家公務員の志望者が減っている。政府は、働き方改革採用試験の見直しで人気回復を図るという。だが、政治との関係のゆがみも、官僚の仕事の魅力を失わせ、不人気を招いてはいないのか。行政の質を保つためには、幅広く原因を分析したうえでの対応が不可欠だ。

 人事院は先月、中央官庁の幹部候補になる国家公務員総合職の採用時期を前倒しすると発表した。来年は約2週間、次の年は約1カ月早める。民間企業と併願しやすくするためという。試験方法の見直しや、合格の有効期間の延長も決めた。

 試験の申込者数は21年度まで5年続けて減り、12年度より3割も少ない。公務員白書は「行政を支える人材の確保にとって危機的な状況」と述べている。

 戦後復興期などとは違い、もはや一部のエリート官僚が日本を引っ張る時代ではない。とはいえ、社会経済の変化に応じて制度を再構築したり、他国との関係を築いて国際交渉に生かしたりする役割は、依然大きい。そうした力を発揮できる人材を集められる環境づくりは、重要な課題のはずだ。

 だが、人事行政を担う第三者機関であるはずの人事院が示す分析と対策は、物足りない。

 人事院は、就職活動を終えた学生への昨秋のアンケートをもとに、希望者減には「試験準備に対する負担感や勤務環境に対する負のイメージが強く影響している」と分析した。

 しかしその調査では、「業務内容に魅力を感じなかった」との回答が、長時間勤務への不安を上回る。とりわけ、省庁の内定を蹴った学生では、「不祥事によってイメージが悪化した」「尊敬や敬意を得られなさそう」との答えも多い。労働時間や試験方法だけでなく、仕事の中身の見直しにも踏み込む必要があるのではないか。

 この間、中央官庁の仕事を大きく変えたのは「官邸主導」への移行だ。官邸機能強化には、縦割り打破や迅速な意思決定に役立った面はある。

 だが一方で、官僚の専門的な知識が軽んじられ、率直に意見具申ができなくなる弊害も招いた。「アベノマスク」配布の顛末(てんまつ)や、財務省の決裁文書改ざんは、その象徴だろう。

 望ましい公務員制度を勧告する立場にある人事院には、政治に忖度(そんたく)して政官関係のゆがみに目をつぶらずに、実効的な対策を打ち出す役割がある。

 本来、官邸機能強化とセットで進めるべき政策決定過程の透明化や説明責任の強化は、おざなりなままだ。「つまみ食い」を放置すれば、ひずみは広がる。積み残しの課題に早期に取り組むことが求められる。

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    千正康裕
    (株式会社千正組代表・元厚労省官僚)
    2022年9月14日16時50分 投稿
    【視点】

    霞が関が優秀な人材を確保することは、社会全体のために非常に重要な課題だ。 このまま、地すべりを起こすように、霞が関からの人材流出や採用難の状況が続けば、政策の質も低下するし、ミスも増えることは間違いない。 今の学生は、霞が関志望