(社説)日韓首脳対話 「正常」に戻す第一歩に

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 多くの懸案を抱えるからこそ、政治指導者が向かいあう必要がある。今回の対話を機に両首脳は会合を重ね、責任をもって健全な関係を取り戻すよう努めるべきだ。

 国連総会に出席している岸田首相が韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領と会った。日韓の首脳が二国間で面会するのは約3年ぶり、この組み合わせでは初めてである。

 だが奇妙なのは、その後の日韓両政府の発表だ。日本政府は会談ではなく「懇談」だと説明し、韓国側は略式ではあるものの「会談」だとした。

 30分にわたり首脳同士が語りあったというのに、その外交行事の呼び方からすれ違うのは何とも子どもじみて嘆かわしい。

 背景にあるのは、日本企業の資産が現金化される恐れがある徴用工問題だ。日本政府はこの間、韓国政府が危機回避策を示さない限り、首脳会談に応じない姿勢をとってきた。

 岸田政権は日韓関係を改善させる意思を示してはきたが、具体的な提案を受ける前の接触を会談とは認めたくないらしい。韓国批判が根強い自民党の保守派を気にするあまりだろう。

 かたや韓国側は、政府高官が一方的に日韓首脳が会談すると発表し、日本側を怒らせた。日韓関係を悪化させた前政権との違いを強調したいがための勇み足だろうが、相手国への配慮を欠いたふるまいだった。

 呼び方はともかく、両政府は久しぶりに実現した首脳同士の対話をはずみに、懸案の打開を進める必要がある。

 関係が冷え込む最大の原因となっている徴用工問題では韓国政府が、現金化を避けつつ被害者らを救済する方策を練っている。針の穴に糸を通すような作業だが、法的な裏付けの確認など、着実に進めている。

 韓国側の解決案を評価できる状況になれば、日本政府は歴史問題で改めて謙虚な姿勢で臨む必要がある。好循環をつくる努力なしに事態は動かせない。

 両首脳は、7回目の地下核実験の動きをみせる北朝鮮について深刻な憂慮を表明した。

 北朝鮮は最大の後ろ盾である中国の共産党大会や新型コロナの感染状況をにらみ、核実験のタイミングを見計らっているようだ。一方で核の使用条件を法制化するなど、核保有国としての既成事実化を進めている。

 日韓は米国とともに歩調を合わせて、地域の安定維持をめざす以外に選択肢はない。

 日韓関係は双方の国内政治に直結する敏感な問題だ。だとしても、両首脳は内向きな打算や思惑だけに拘泥してはならない。国際社会が抱える課題解決にともに挑むためにも、一刻も早い関係改善が急務である。