(社説)安保文書改定 拙速では理解広がらぬ

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 戦後日本の安全保障政策の大きな転換になりうる文書の改定が年末に迫っている。

 岸田首相が見直しを表明してから1年。専守防衛との整合性が問われる敵基地攻撃能力の保有については「あらゆる選択肢を検討」。バイデン米大統領に「相当な増額」を伝えた防衛費の水準については、内容、財源と「3点セット」で決める。この間の国会でも参院選でも、あいまいな説明に終始してきた。

 このまま期限が来たからといって、拙速に結論を出しては、世論の幅広い理解や納得につながらず、首相自身が掲げた「国民と共にある外交・安保」にももとる。透明性のある徹底した議論が不可欠だ。

 国家安全保障戦略など安保3文書の改定に向け、政府が「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」の初会合を開いた。首相はあいさつで、省庁の縦割りを排した「総合的な防衛体制の強化」と、それを支える「経済・財政のあり方」について検討を求めた。

 自民、公明による与党協議も近く始まる見通しで、有識者会議では、敵基地攻撃能力の是非などは主要テーマにならないとされる。増税で賄うとなれば、国民負担が避けられない財源論議が大きな焦点になりそうだが、外交や経済を含む総合的な戦略の構築と、そのなかでの防衛力整備のあり方についての議論からまず始めるべきだ。

 政府が1~7月に計17回行った元政府関係者や学識者らとの意見交換の内容は、すべてが終わった9月にまとめて要旨が明らかにされた。今回の有識者会議では、原則として、その都度、議事要旨を、全体の終了後に、発言者名も付した議事録を、それぞれ公表するとした。

 透明性が高まるのは歓迎できるが、大切なのは議論の中身である。東アジアの安全保障環境は厳しさを増しており、防衛力向上の必要性は、多くの国民が感じることだろう。ただ、それが本当に日本の安全につながるのか、かえって地域の緊張を高めないか、いまの日本の国力に照らして持続可能か、については多角的な検討が必要だ。

 有識者会議が、政府の進めたい方向性にお墨付きを与えるだけの場になってはならない。活動期間は実質2カ月となりそうだが、集中して議論を尽くしてもらいたい。

 国の施策により多くの国民の支持を得たいのなら、反対意見にも正面から向き合い、納得を得る努力を避けてはならない。それを欠いたまま、いくら予算を増やし、装備を整えても、真に強い防衛力にはなるまい。きょうから始まる臨時国会で、首相の姿勢が厳しく問われる。

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