(社説)首相国会答弁 2日前の言葉お忘れか

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 「国民からの厳しい声にも、真摯(しんし)に、謙虚に、丁寧に向き合っていくことを誓う」

 「『厳しい意見を聞く』姿勢にこそ、政治家岸田文雄の原点がある」

 今国会の冒頭、2日前の所信表明で述べた自身の言葉を、岸田首相はもうお忘れか。

 首相の演説に対する各党の代表質問が始まった。質問1回、答弁1回の一方通行ではあるが、政権に対する国民の信を取り戻すべく、首相が自らの言葉で、どこまで踏み込んで議論に応じるかが注目された。

 しかし、正面から疑問に答えなかったり、従来の説明をなぞるだけだったり、その姿勢はこれまでとほとんど変わらず、真摯、謙虚、丁寧という言葉が空しく響いた。

 安倍元首相の追悼をめぐり賛否が割れた、首相経験者の「国葬」については、今回の検証を踏まえ、国会との関係や手順など「一定のルールを設ける」と表明した。ただ、世論を分断した判断を問われても、「国民や各党の様々な意見、批判を真摯に受け止める」と述べるだけで、国葬を決めた当事者としての自省は聞かれなかった。

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政治の関係をめぐっては、教団との決別の覚悟を疑わせる答弁が続いた。

 外部の指摘を受けるたびに、後追いで接点を認める山際大志郎経済再生相への対応もそうである。立憲民主党泉健太代表が更迭を求めたが、「できる限りの調査、説明を行い、今後は一切関係をもたないと述べている」と首相はかばった。「理解を得られていないなら、自らの責任で丁寧に説明を尽くす必要がある」と、本人任せに終始するのは、任命権者としての責任放棄と言わざるを得ない。

 第2次安倍政権下での教団名の変更については、所轄庁の判断であり、「政治的な関与はなかった」と言い切った。だが、詳細な経緯の検証ぬきに、結論だけ示されても納得はできない。委員会などで徹底した質疑に応じるべきだ。

 説明回避が特に目立ったのが、安全保障分野だった。大幅増をめざす防衛費は内容、予算、財源を一体で決める。敵基地攻撃能力の保有は、「あらゆる選択肢を排除せず検討」。これまでの言いぶりから、一歩も出なかった。

 泉氏は安保3文書を決定する前に、国会で議論するよう求めたが、首相は「来年度予算としてお示ししたい」などと述べるばかり。国民の代表が集う国会での論議は後回しというのでは、「国民と共にある外交・安保」という看板には偽りありというほかない。