(社説)習氏3期目へ 制約なき権力は危うい

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 任期の制約を廃して権力を自らに集め、周囲をイエスマンで固める。まさしく個人支配は極まった観がある。世界は、暴走の危うさをはらむ中国と向き合わねばならない。

 中国共産党を2期10年率いてきた習近平(シーチンピン)氏が、さらに3期目を務めることがきのう、決まった。69歳の習氏は「党大会の年に68歳以上なら引退」という慣例を無きものにした。党規約を改正し、自身の権威をいっそう高める文言を盛り込んだ。

 最高指導部である常務委員の人事では、習氏と距離があるとされた李克強(リーコーチアン)首相らが退いた。新任の4人は中央での経験や実力より、習氏への忠実度で選ばれたとみるべきだ。後継候補は見当たらず、4期目も習氏が担うとの見方が早くも出ている。

 問題が起きても意見をせず、党と政府の幹部らがこぞって習氏の顔色をうかがう。その弊害はすでに顕在化している。

 今回の党大会の期間中、国内総生産など経済統計の発表が突然延期されるという、尋常ではない出来事があった。経済の不振を印象づける数字の公表を控えるべく、担当部局が忖度(そんたく)したとの見方がもっぱらだ。

 中国の統治制度は権力分立を否定している。さらに共産党の一党支配体制なので、党の最高指導者の力が突出すれば、歯止めのかけようがなくなる。だからこそ、権力者をどう選び、いかに制約をかけるかが党にとって重い課題となってきた。

 かろうじて権力を縛る役目を担ったのが、現行憲法が規定する国家指導者の任期制限だった。ところが習氏は、「国家主席は1期5年で2期まで」とした規定を4年前に改正し、任期制限を撤廃した。党総書記のポストに加え、来春には国家主席3期目の就任が確実だ。

 習氏は、ルールを設けて権力を制約する制度化の流れを止め、逆行させているのであり、極めて危うい。党大会の報告で習氏は「法治」に20回以上言及して、法整備の重要性を強調したが、自分だけは法治の例外にするつもりだろうか。

 欧米で政治の混乱が続いたこともあり、習政権は中国の政治体制の優位性を説いている。だがロシアのウクライナ侵略は、独裁的な指導者の誤った判断が大惨事を引き起こした典型だ。ブレーキのない権力、物言えぬワンマン統治が、国益を損ね、破滅をもたらしかねないことを習氏は深く認識すべきだ。

 今後、外交や軍の行動が習氏への忠誠を示すべく過度に強硬になるおそれがある。であればこそ、日本を含む関係国は中国との対話を絶やさず、責任ある大国の常道から外れないよう説得する努力が必要だ。

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