(社説)ミャンマー 未来なき孤立と決別を

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 国際的な孤立を選んだ国に未来はない。安定や発展を望むのであれば、まずは地域の声に耳を傾けるべきだ。

 東南アジア諸国連合ASEAN)の首脳会議が今月、カンボジアで開かれた。3年ぶりの対面開催だったが、加盟国であるミャンマーの姿はなかった。

 昨年2月に国軍がクーデターで実権を握って以来、民主政治の復活を求める市民への弾圧が今も続く。ASEANとは「暴力停止」など5項目で合意したが、実現していない。不信を強めるASEANが国軍トップを招かなかったのは当然だ。

 首脳会議では、国軍に5項目を履行させるため、日程を明確にした検証可能な計画を策定することが決まった。今後、外相会議で内容を詰める。

 「終わりなき悪夢」(国連事務総長)。ミャンマー市民がおかれている状況は、まさにこの言葉に尽きる。国軍の暴力による死者は2400人、逮捕者は1万6千人を超した。北部の少数民族地域では先月、コンサート会場が空爆され、約60人が犠牲になった。ASEANは国連などとも連携し、国軍への圧力を一層強める必要がある。

 一方、国軍は「内政干渉によってASEANの団結を台無しにしている」と、首脳会議の決定に反発した。思い違いもはなはだしい。団結にあらがっているのは国軍のほうだ。

 創設から半世紀以上たったASEANは、いまや経済共同体として成長し、域内の貿易自由化や高速道路網による統合を進めている。経済発展で取り残されたミャンマーは、いかなる将来像を結ぶつもりなのか。

 アジア開発銀行によると、昨年は成長率がマイナス5・9%に落ち込んだ。今年もASEAN内で最低の見通しだ。政変後の国内避難民は110万人に達し、少なくとも310万人が人道支援を受けた。この惨状をみれば、もはや国軍に統治の資格も能力もないのは明らかだ。

 ASEAN議長国は来年、インドネシアに引き継がれる。ジョコ大統領は国軍に「深く失望している」と述べ、厳しい態度で臨む姿勢だ。

 25年前、ASEANが欧米の批判に抗して軍政のミャンマーを迎え入れた背景には、当時のスハルト・インドネシア大統領の意向があった。ミャンマーは軍が母体のスハルト体制をひとつのモデルとしていた。

 そのスハルト独裁は20世紀末に崩壊し、その後のインドネシアは民主化の進展とともに着実な経済成長をとげてきた。その歩みをふまえ、国軍に民主化の意義を説く力がジョコ大統領にはあるはずだ。行き詰まりの打開に指導力を求めたい。

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