(社説)ウーバー配達員 働き手の権利を守れ

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 社会環境の変化や技術の進歩は、様々な働き方を生みだす。選択肢が広がるのは悪いことではないが、働き手が弱い立場におかれ、泣き寝入りを強いられるのは、看過できない。ルールの整備を急ぐ必要がある。

 東京都労働委員会が、飲食宅配代行サービス「ウーバーイーツ」の運営会社に、配達員らの労働組合との団体交渉に誠実に応じるよう命じた。ネット上のサービス基盤(プラットフォーム)を介して仕事を請け負う働き手を労働組合法上の「労働者」と認め、事業者の責任を示した日本で初の判断だ。

 ウーバー側が決定を不服とし、中央労働委員会や裁判で争う可能性はある。だが、法的責任について一定の判断が示された意義は大きい。

 配達員らは、報酬を決める計算手順(アルゴリズム)が不透明なことなどに不満を持ち、19年に労働組合を結成した。団体交渉を申し入れてきたが、ウーバー側は配達員が個人事業主にあたるとして、全く応じてこなかった。

 しかし、労働組合法の趣旨は交渉力の弱い働き手を保護することにある。労組を作ったり団体交渉したりする権利が認められる労働者は「雇用労働者」には限られない。

 都労委は、ウーバーがサービス基盤の提供だけでなく、配達業務の遂行に様々な形でかかわり、配達員を事業に不可欠な労働力として組み入れていると認定した。契約内容も個別交渉の余地がなく、対等な関係性は認められないとも指摘している。そうした実態を踏まえ、労組法で保護すべき労働者と解するのが相当とした。

 極めて妥当な判断である。ウーバー側は、重く受け止め、誠実に対応すべきだ。

 団体交渉の権利が認められれば、報酬などの労働条件を交渉する道が開かれる。だが、それで直ちに、労働基準法最低賃金法が適用される労働者と同等の権利が保障されるわけではない。制度の見直しを含む保護のあり方の議論が必要だ。

 海外では、プラットフォーム事業者に仕組みの透明性を高めるよう求め、働き手を保護する流れが進む。日本でも、ウーバー配達員のような「ギグワーカー」やフリーランスの保護について検討が続いているが、実際の対応はまだ不十分だ。

 岸田首相は今国会に、ハラスメント対策なども盛り込んだフリーランス新法を提出すると表明していたが、いまだに実行していない。全世代型社会保障構築会議が検討課題にする「フリーランス・ギグワーカーなどへの社会保険の適用」も含め、具体化を急がなければならない。

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    常見陽平
    (千葉商科大学准教授・働き方評論家)
    2022年11月27日7時50分 投稿
    【視点】

    ■「バイト先はウーバーイーツ」と語る若者にまつわる深い問題  タイトルをみて揚げ足とるなよ。わざとやっているんだからな。「バイト先はウーバーイーツ」と言い出す若者をたまに見かける。知人のライターは、「ウーバーイーツでバイトしてみた」という

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