(社説)臨時国会閉会 教団と政治 解明まだだ

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 献金・寄付の悪質な勧誘を規制する新法は、会期末ぎりぎりに成立にこぎつけ、被害者救済に向けての一歩となった。

 しかし、政治、とりわけ自民党と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との根深い関係の解明はこれからである。国会をひとまず乗り切ったことで、岸田首相がこの問題に幕を引けると思ったら大間違いだ。

 臨時国会がきのう閉会した。

 総額約29兆円の2次補正予算は、借金頼みや予備費の乱用などの問題を抱えながら、あっさり成立した。反対した野党の切り込みも不十分で、予算を吟味する立法府の責務が果たされたとは言い難い。

 一方、被害者救済新法では、与野党が協議を重ね、最後は政府提出法案を修正することで折り合うという異例の展開となった。当事者から実効性に疑問が呈されるなど、多くの課題は残るが、与野党が粘り強く一致点を探ったことは評価したい。

 今後の被害の防止に向け、新法は出発点となるが、これまでの教団と政治の関係の検証は置き去りにされたままだ。

 首相は国会冒頭の所信表明演説で、教団との関係について「国民の声を正面から受け止め、説明責任を果たす」と語ったが、空約束に終わった。

 安倍政権下での教団の名称変更では、「政治的な関与はなかった」と言うが、説得力のある根拠を示していない。教団と自民党をつなぐ要と目される安倍元首相の役割は調べない。教団と深い関係が指摘される萩生田光一政調会長に、説明責任を果たすよう迫った様子もない。

 議員の自己申告による党の「点検」の限界は明らかなのに、総裁として指導力を発揮する場面もなかった。教団と事実上の政策協定を交わしていた議員の存在が明らかになった際も、全員に確認することもしないまま、政策への影響はないと繰り返した。

 そもそも、この国会は、憲法53条に基づく野党の要求が1カ月半たなざらしにされた後、世論を二分した安倍氏の「国葬」や、教団と自民党との関係などによって、内閣支持率が大きく低下する中で始まった。

 首相にとっては信頼回復の正念場だったが、山際大志郎経済再生相、葉梨康弘法相、寺田稔総務相の相次ぐ辞任で思惑ははずれた。

 防衛力強化に向けた関連予算の国内総生産(GDP)比2%への増額や、財源としての1兆円の増税検討の指示は、国会での本格論戦から逃げるかのように、閉会直前に打ち出された。率先して説明責任に向き合うべきは首相自身である。それなしに政権への信は取り戻せまい。

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