(社説)「発達障害」の子 学校と専門家 力集めて

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 35人のクラスなら発達障害の可能性がある子が3人いるのに、支援が行き届いていない。公立小中学校のそんな実情が、文部科学省の調査でわかった。

 調査は、抽出された児童・生徒について、学習障害や注意欠如・多動症の診断項目などを参考に作った質問に当てはまるか、担任教員らが回答。医師の診断を受けたものではないが、教育的な支援が必要な子どもの実態や、支援状況を把握しようと10年ぶりに実施された。

 全国の公立小中学校の通常学級で学ぶ児童生徒のうち8・8%が、「学習面または行動面で著しい困難」を示し、発達障害の可能性があるとされた。また、こうした子のうち4割強は、授業中に席の移動といった配慮を受けていなかった。

 著しい困難を示す子については、文科省が小中高などに設置を求めている校内委員会で、支援内容などを決める必要がある。だが、校長らが参加する校内委が「特別な教育的支援が必要」と判断したのは3割弱。通常学級に在籍して一部を別教室で学ぶ「通級指導」を受けていた子は、1割程度だった。

 この結果について文科省は、校内委が十分に機能していない学校が多いとみる。成長した後に苦しむ子が出ないよう、早急に改善しなければならない。

 重要なのは、一人ひとりにどんな支援をすべきか、判断できる教員を増やすことだ。そして学校も、校内委の適切な運用とともに、校外の専門家らの力も集め、組織的に支援する体制を整えることが求められる。

 国連の障害者権利委員会は昨年、障害がある子を分離する教育は問題だと日本政府に勧告した。ただ、少人数指導を求める保護者は多く、特別支援教育をすぐにやめるのは難しい。

 だが、支援のあり方を、立ち止まって考える良い機会だ。まずは分離せずに授業の進め方などの工夫で対応し、難しければ個別対応に切り替える。そんな柔軟な進め方を試してもいい。

 その実現には、教員の間に特別支援の知識が行き渡ることが必要だ。文科省は、教員免許を取得する際、特別支援の授業で1単位以上取ることを義務づけた。そして若手教員に特別支援学級・学校を2年以上経験させるよう、教委に求めている。

 こうした教員の層が厚くなるには時間がかかる。そこで一層、専門家との連携がカギになる。政府は、子どもの心をケアするスクールカウンセラーや、家庭や専門機関と連携して支援するスクールソーシャルワーカーらの配置を増やすべきだ。学校も、困った時に助けを求めやすいよう、普段から外部の組織と関係を築いておいてほしい。

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