(社説)家賃保証急増 入居者の保護に軸足を

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 賃貸住宅の貸主と借り手の間に、家賃保証会社が介在する例が大幅に増えている。3者の契約内容によっては、生活苦から家賃を一時的に払えない入居者らが部屋を追い出され、住まいを失う事態も懸念される。

 そんなリスクを重く見て、警鐘を鳴らす最高裁判決が昨年末に示された。大手保証会社が使う契約条項について、「借り手の利益を一方的に害するもので、消費者契約法に反して違法」と断じ、条項の使用を禁じた。入居者の権利保護を後押しする力になると評価できる。

 問題になったのは、大阪の消費者団体が是非を問うた「追い出し条項」だ。(1)家賃が3カ月以上滞納されれば、保証会社は借り手に知らせず賃貸借契約を解除できる(2)家賃を2カ月滞納して連絡がつかず、電気・ガス・水道が長く未使用などの条件がそろえば「明け渡し」とみなす、というものだ。

 判決は(1)について、保証会社は賃貸借の当事者ではなく、借り手が生活の基盤を失う不利益を看過できないと指摘。(2)も、借り手が部屋を使う権利が一方的に制限され、法的措置によらず明け渡しとみなすのは著しく不当とした。当事者間の公平を重んじ、人権の礎である「居住の権利」を尊重した結論だ。

 保証会社は借り手から保証料を受け取り、家賃の滞納があれば肩代わりして、後から借り手に請求する業態だ。国土交通省によると全国に約250社あり、利用率は10年に39%、16年に60%、21年には80%と急増。家族関係の希薄化や独居の増加で連帯保証人を確保しにくい入居者が多くなり、貸主も損失を避けようと、保証会社に委託する傾向が強まっている。

 リーマン・ショックの後、悪質な追い出しが問題になり、国交省は17年の住宅セーフティーネット法改正に伴って家賃保証業者の登録制度を始めた。ただし任意で、約90社にとどまり、国の監督が行き届いている状況とは言いがたい。そしていま、コロナ禍の影響で家賃に苦しむ人が増え、長期の滞納に難渋する保証会社もあるという。

 入居者の保護に軸足を置き、住宅行政をもっと充実・強化させる時だ。低所得者層への公的支援の拡充も必要だ。相談業務や家賃保証を担う「居住支援法人」制度も17年に始まり、600団体近くに広がった。ホームレス支援にあたるNPOなどを都道府県が同法人に指定し、国の助成金などで住まいの確保につなぐ仕組みだ。だがその多くが赤字傾向で、需要に見合う物件が少ないなど課題は多い。

 住まいの問題は社会保障の重要な課題でもある。国会にも真剣な議論を求めたい。

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