(社説)ミャンマー 政変2年 国軍に圧力を

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 ミャンマー国軍がクーデターを起こしてから、きょうで2年になる。この間、殺害された市民は約2900人。1万3千人以上が拘束されたままだ。大規模なデモは抑え込まれ、SNSの発信すらままならない。経済の低迷や閉塞(へいそく)感から、国を去る若者も後を絶たない。

 国民に苦痛と絶望をもたらした責任は、ひとえに国軍にある。武力で奪った権力を手放し、民主政治に戻るよう、国際的な圧力を強めねばならない。

 国軍に拘束されたアウンサンスーチー氏に対する19件の裁判は、昨年末に判決が出そろった。すべて有罪で、刑期は合計33年におよぶ。77歳の彼女にとっては終身刑に等しい。

 一方、国軍は8月までに実施するとして総選挙の準備を進めている。スーチー氏ら民主派を排除したまま選挙を強行し、軍主導の政権を作ろうという思惑は明らかだ。米欧や日本は、こんな茶番の「民政移管」を認めるはずがない。だがミンアウンフライン国軍最高司令官は、中国とロシアの後ろ盾を頼みに強気を崩さない。

 その点で、ミャンマーも加盟する地域機構、東南アジア諸国連合ASEAN)の対応が重要だ。だが、カンボジアやタイなど一部の国が国軍に融和的姿勢を見せるなど、足並みに乱れが見えるのは気がかりだ。

 今年の議長国であるインドネシアは、かねて国軍に厳しい姿勢を見せてきた。今週には外相会議が予定される。ASEANが一枚岩で毅然(きぜん)と国軍と向き合うよう、加盟国間の調整に努力してほしい。

 見過ごせないのは、ミャンマーで迫害され国外に逃れた少数民族ロヒンギャの窮状だ。国連によると、隣国バングラデシュなどからボートでさらに周辺国を目指した難民は、昨年3500人を超えて一昨年の5倍近くになった。うち約350人が死亡・行方不明となっている。

 軍の掃討で住む場所を失った彼らは、民主政権が転覆されたことで、帰国が事実上不可能となった。難民キャンプでも抑圧されていると伝えられる。粗末なボートで大海にこぎ出し、命を失う悲劇には言葉がない。

 とはいえ、経済力の乏しい後発開発途上国からようやく脱しようというバングラデシュに、難民対応で過度な負担はかけられまい。ウクライナ情勢に目が向きがちだが、先進国は人道危機を止める支援を続ける責務を忘れてはならない。

 日本は米欧の経済制裁とは距離を置くが、国軍からの留学生受け入れ中止を決めるなど、厳しい姿勢を強めている。今年はG7議長国でもあり、国際世論を束ねる役割を期待したい。

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