(社説)日印の連携 国際秩序 安定へ貢献を
人口14億人を超すインドは、「世界最大の民主主義国」といわれ、急速な経済成長を続けている。新興国や途上国の「代弁者」を自任し、今年は主要20カ国・地域(G20)の議長国でもある。日印の連携強化を、二国間にとどまらない、国際秩序全体の安定につなげたい。
岸田首相が今週、インドの首都ニューデリーを訪れ、モディ首相と会談した。5月に広島で開く主要7カ国首脳会議(G7サミット)にインドを招待するとともに、「グローバルサウス」と呼ばれる新興国や途上国との関係強化に取り組む考えを伝えた。
ロシアのウクライナ侵略から1年。G7各国は足並みをそろえてウクライナを支援し、経済制裁など、ロシアへの圧力を強めてきたが、新興国・途上国に同調の輪は広がっていない。
インド自体、旧ソ連時代からロシアと良好な関係にあり、現在も主要兵器の半分近くをロシアに頼る。ロシア非難の国連決議は棄権。制裁には加わらず、むしろロシアからの石油の輸入を増やしている。
首脳会談では、岸田氏が「力による一方的な現状変更は、アジアを含む世界中のいかなる場所でも許してはならない」と述べ、「法の支配」に基づく国際秩序の維持・強化で一致した。中国との間で国境問題を抱えるインドも賛同できる原則であり、ウクライナ対応で協調を図る足がかりとしたい。
9月にニューデリーで開かれるG20サミットには、G7諸国のほか、ロシアとの連携を深める中国に加え、中南米、アジア、中東、アフリカの有力国が集まる。モディ氏は会談後の共同記者発表で「議長国として重要な柱の一つは、グローバルサウスの優先事項について声をあげることだ」と話した。
ロシアの侵略を止めるには、G7だけでなく、幅広い国際社会の結束が不可欠だ。岸田氏が食料やエネルギー問題など、新興国・途上国が抱える深刻な課題への貢献を強調したのは、モディ氏の意向に呼応したものといえる。インドにはG7と新興国・途上国をつなぐ積極的な役割を期待したい。
インドは年内にも、中国を抜いて、人口が世界一になる見込みで、将来的には経済規模でもトップになる見通しだ。未来を見据え、二国間においても、貿易、投資、人的交流など、重層的な関係を深める必要がある。
日本は近年、自衛隊とインド軍の共同訓練を重ねるなど、中国を念頭に、安全保障分野での協力を拡大している。いたずらに対決姿勢を強めることなく、地域の平和と安定に資する連携にしなければならない。
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