(社説)大阪カジノ認定 懸念置き去り許されぬ

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 日本初のカジノを大阪市につくる計画が本格的に動きだすことになった。本当に地域の活性化につながるのか。ギャンブル依存症の患者を増やすことにならないか。様々な懸念を置き去りにしたまま、押し通すことは許されない。

 カジノを含む統合型リゾート(IR)について、大阪府・市の整備計画を政府が認定した。今後、事業者にカジノ免許を与える手続きとともに、併設するホテルや国際会議場、劇場などの整備事業が始まる。

 国内外からの観光客誘致の起爆剤になると国や大阪府・市は強調する。年間2千万人が来場し、売上高は5200億円、その8割はカジノの収益を見込むが、思惑通りになるかはわからない。コロナ禍でネット経由の会談や商談が広がり、カジノもオンライン化が進む。

 何より心配なのが、ギャンブル依存症の拡大である。

 外国人観光客は入場無料で、利用回数に制限がないのに対し、日本人からは6千円の入場料をとり、「7日間で3回まで」といった上限を定めるというが、不十分との指摘が多い。大阪府は依存症対策推進条例を制定し、基金や支援センターの設置を掲げるが、治療・回復のための施策が中心だ。

 依存症の問題に取り組んできたNPOなどは「ギャンブルの場をむやみに増やさないことが最大の対策だ」と訴えている。まさにその通りではないか。

 地域開発の観点からも、難題が明らかになっている。

 建設予定地は大阪湾の人工島だ。大阪市は公費投入を否定してきたが、カジノ事業者の要求を受けて態度を一変。有害物質の除去や液状化対策の費用約790億円を負担することになった。事業者の公募に1グループしか手を挙げず、何としてもIRを実現したい行政との力関係が「業者優位」になったことが背景にある。

 大阪府・市が事業者と結んだ協定でも、状況次第で撤退の申し出を受け入れることにするなど、譲歩が目立つ。建設予定地では、さらに地盤沈下対策が必要になる恐れもあり、公費投入が膨らむ懸念が拭えない。

 IR事業はもともと、維新が選挙公約に掲げたのが出発点だ。先の大阪府・市の首長・議会選で維新は再び勝利したが、メディアの世論調査では、IR誘致への慎重・反対意見が根強いことも浮き彫りになった。こうした住民の思いにしっかり向き合うべきだ。

 長崎県が申請した計画は認定が見送られ、審査が続くことになったが、国は3カ所までIR事業を認める方針だ。問われているのは大阪だけではない。

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