(社説)維新・梅村議員 根拠のない発言 撤回を
事実に基づかない国会での発言は撤回し、謝罪すべきだ。
出入国管理法改正案を巡る国会審議で、日本維新の会の梅村みずほ参院議員が、入管施設で死亡した被収容者について根拠のない発言を繰り返している。
2年前のウィシュマ・サンダマリさんの死は、収容の長期化や乏しい医療態勢など、入管の課題を広く提起した。そのウィシュマさんについて、梅村氏は先週の参院本会議の代表質問で「支援者の一言が『病気になれば仮釈放してもらえる』という淡い期待を抱かせ、医師から詐病の可能性を指摘される状況へつながったおそれも否定できない」と発言した。
遺族の弁護団が根拠をただすと、16日の参院法務委員会では「事実はない。しかし可能性は否定できない」と繰り返し、ハンガーストライキによる死去の可能性にも言及した。入管当局は詐病ともハンストとも認めていない。「可能性」という言葉にくるみ根拠に欠ける独自の見解を展開するのは、議場での発言に伴う責任を忘れた行為だ。
きのう、梅村氏は国会議員の議場での発言は国会外では免責されるとの憲法の規定を挙げ、「何のための免責特権か。タブーに切り込むためだ」とも述べた。特権を振りかざして根拠なく他者を傷つけることが道義的に許されるはずはない。
窮地の外国人を支える人々をおとしめる発言でもある。ウィシュマさんの死を巡る入管の最終報告書には、精神科医が入管職員の説明をふまえ「一つの可能性として詐病を考えた」との記述はあるが、支援者が促したとの記載はない。
外国人の収容のあり方を見直すべき法案審議の場で、殊更に外国人や支援者を責めようとする意図は理解しがたい。
党の責任も極めて重い。維新はきのう、梅村氏を法務委の委員から外し、党としての処分を後日決める方針を発表した。藤田文武幹事長は「思い込みや想像で感情的な質疑をしたことは極めて不適切」と述べた。
しかしここに至るまでの対応は鈍く、梅村氏が国会で人を傷つける発言を繰り返すのを許した。処分も厳しい批判に押されてのことだろう。事態を真摯(しんし)に受け止めていたとは言い難い。
本会議での質問は党を代表したものであり、党の政策部門が内容を最終チェックしていたという。音喜多駿政調会長は一昨日、「問題提起として間違ったことをしたとは思っていない」と述べており、党も理解していたと見られても仕方ない。
維新は次の衆院選では野党第1党をめざすという。人権感覚への疑念を払拭(ふっしょく)できなければ、その資格はないと心すべきだ。
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