マイナ保険証、なぜトラブル続く デジタル先進国エストニアでは 専門家・牟田学さんに聞く
マイナンバーカードを健康保険証として使う「マイナ保険証」をめぐってトラブルが相次いでいる。一方、デジタル先進国の一つとされるエストニアでは、IDカードの取得は義務化されているが、保険証は廃止されていないという。現地の事情に詳しい一般社団法人「日本・エストニアEUデジタルソサエティ推進協議会」理事の…
- 【視点】
もともと制度が複雑すぎるのに、デジタル化(だけ)を導入しようとしたことに無理があった。「デジタル化すれば問題が解決する」というのは幻想で、デジタル化に適した制度に変えるか、複雑な制度のままでもデジタル化できるようにマンパワーを確保するか(その場合のデジタル化のメリットは不明だが)、どちらかが必要だった。そういう趣旨として読んだ。 日本の制度は概してそうだが、法律も制度もゆるく作ってあり、現場の裁量が大きい。これは明治政府が、官庁の裁量を大きくするため、法律や憲法をゆるく作り、官庁がそれに拘束されないようにしたのが歴史的起源といえる。日本の制度には、明確な規定がいくつか続いた後に「等」が「裁量の余白」として書かれていることがある。これは、当然ながらデジタル化と相性が悪い。 さらに、日本の健康保険制度の歴史は、つぎはぎの連続である。大企業や官庁など作りやすいところから保険組合を作り、あとは様々な制度をつぎはぎして全国民に広げ、そのつぎはぎ状態を根本的に変えないまま時代と社会の変遷に対処してきた。結果、建て増しをくりかえした建造物のように複雑になっている。それを支えていたのは、現場の職員たちの経験と工夫と裁量だったが、それらは統一とかデジタル化には適さないものだったかもしれない。 制度が複雑なために生じている問題を、デジタル技術の導入で解決する、というのは技術万能論に近い。技術はしょせん技術であり、適切な使い方をしないと機能しない。そういう教訓になるのかもしれない。
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