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 「医院の看板には、内科、小児科、アレルギー科と書いてあるけれど、この先生の専門科はいったいどれになるの?」と、ある友人から聞かれました。1人の医師が診療しているのに複数の診療科が標榜(ひょうぼう)されていることに疑問を感じる人は少なくないようです。

 日本では、医師免許を取得していれば基本的に専門分野や経験年数に関係なく、医療法で定められた診療科のうち、どれを標榜してもよいことになっています。たとえば、外科のトレーニングしか受けていないのに内科や小児科も標榜できるというわけです。この制度は「自由標榜制」といって日本独特のものです。

 そのため、患者は医療機関にかかるとき、しばしば困ることになります。私も娘の乳児6カ月健診を受けようと、近所の「内科、小児科」と標榜された医院を受診したら、その医院の医師は乳腺外科の専門医であることがわかり、小児科医を探し直した経験があります。

 厚生労働省では、このような事態を解消し、患者や地域住民が自分の病状に合った適切な医療機関を選べるように、広告できる診療科名の政令と省令の改正を行い、2008年4月から施行しています。

 この改正では、医療機関が広告することのできる診療科名の数についても改められました。それまでは勤務する医師の数にかかわらず、いくつでも診療科名を標榜することができました。しかし、改正後は勤務する医師1人に対して主たる診療科名は原則二つ以内、表示に当たってはその診療科名を大きくするなど、他の診療科名と区別することが望ましいとされています。

 これにより複数の診療科名が標榜されていても、何科を主体に診療している医療機関なのか、ある程度の見分けがつくようになりました。とはいえ、自由標榜制は存続していますので、医師が自分の専門以外の診療科を主体に広告していることも考えられます。医院やクリニック、診療所の看板とそこで働く医師の専門科は必ずしも一致しないことを念頭に置いておいたほうがよさそうです。

(朝日新聞 2009年6月3日掲載、2015年4月23日更新)

アピタル編集部より

この記事は、2009年に朝日新聞山梨版に掲載された記事をもとに、2015年4月、アピタルへの掲載にあたり、内容の一部を新しいデータや仕組みに更新したものです。

<アピタル:医療情報を読み解く・用語>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/yomitoku1/(アピタル・渡辺千鶴)

アピタル・渡辺千鶴

アピタル・渡辺千鶴(わたなべ・ちづる) 医療ライター

愛媛県生まれ。京都女子大学卒業。医療系出版社を経て、1996年よりフリーランス。共著に『日本全国病院<実力度>ランキング』(宝島社)、『がん―命を託せる名医』(世界文化社刊)などがある。東京大学医療政策人材養成講座1期生。現在、総合女性誌『家庭画報』の医学ページで「がん医療を支える人々」を連載中。

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