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 みなさんは「脊髄(せきずい)損傷」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。交通事故や、高い所から落ちたことが原因で起こるケースが大半です。

 脊髄は脳から背骨の中を通って伸びている太い神経で、「電線」の役割をしています。頭をポリポリかいたり、こっそりつまみ食いをしたり、人間の体を動かす様々な指示は脳からこの脊髄を通って全身に伝わるので、人間にとってとても大切な部分といえます。

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 脊髄は脳と同じ中枢神経なので、一度傷つくと二度と再生することができません。しかも、損傷箇所と関係する体の部分にまひが残るので、「ただ頭を打って、手足がしびれただけ」と言ってそのままにしておくのは避けた方がよいのです。

 人の背骨は頚椎(けいつい)、胸椎(きょうつい)、腰椎(ようつい)で構成されており、頚椎の場所で脊髄が傷つくと頚髄損傷と呼ばれます。

 頚髄は手足の神経が通っていますので、ここで重大な損傷が起こると、手足が不自由になる(四肢まひ)▽息ができなくなる(呼吸抑制)▽尿が出なくなる(排尿障害)▽便が出なくなる(排便障害)▽心機能低下(脈拍数が少なくなる徐脈や低血圧)といった重大な症状が出ます。

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 最近の日本では、高齢化による頚椎変形が原因で、ちょっとした刺激で引き起こされる「非骨傷性(ひこっしょうせい)頚髄損傷」が増加傾向にあります。

 手のしびれやまひ、物に触れることができないような激しい痛みなどが慢性的に続くことがあります。高齢者では、発症時期が不明であったり、軽微な外傷のため原因がはっきりしなかったりする場合があります。その結果、しっかりとした検査が実施されず、「脳梗塞(こうそく)」や「加齢変化」などと誤った診断がなされていることもあります。

 「非骨傷性頚髄損傷」が起こる原因として青森でよく見られるのがリンゴを栽培するための作業に伴うものです。農薬散布のためにスプレーヤーという機械に乗車中、リンゴの木の枝におでこをぶつけて受傷することやリンゴの木から転落して受傷することもあります。

 また、冬には凍結した道路で転倒し頭部を打撲して受傷することもあります。

 特に男性で多く発生し、飲酒時に多く発生する特徴があります。普段から手足のしびれがある方は、一度整形外科を受診し、頚椎を調べてもらうことをお勧めします。

 また、リンゴ園で作業をする際には必ずヘルメットを着用してください。お酒を飲んだ際には雪道での転倒に十分注意してください。

 次回は頚髄損傷の治療と社会復帰についてお伝えします。

 (弘前大学大学院医学研究科整形外科学講座助教 熊谷玄太郎)

<アピタル:弘前大学企画・骨と関節の病気 予防と治療>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/hirosaki/

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