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 団塊世代が75歳以上になり医療・介護の提供が追いつかなくなる「2025年問題」について、中高生に考えてもらおう――。4回の体験型連続講座が、横浜市内で実施され、記者も参加した。急速に進む超高齢化に、中高生たちは何を感じたのか?

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 3月14日午後、横浜市神奈川区。西神奈川ヘルスケアクリニック院長の赤羽重樹医師(53)の訪問診療に、横浜英和女学院高2年の中田みすずさん(17)と聖光学院中3年の炭田英毅君(15)が同行した。

 連続講座の3回目。中高生たちが実際の在宅医療の現場を見るのが目的だ。

 1軒目は、神経難病で寝たきりの60代男性の自宅。赤羽医師は、介護する妻に、男性の体の状態を尋ねながら、腹のあたりをポンポンたたく。「おなかに空気がたまっているか、みているんだよ」と生徒たちに説明した。その後、聴診器で何度も、胸の音を確認した。約45分間の訪問診療を終えると、認知症の80代女性宅に向かった。

 クリニックに戻ると、赤羽医師と生徒2人、スタッフで心理士の松原芽衣さん(32)が、訪問診療で感じたことを語り合った。「思った以上に、診療に時間をかけているのに驚いた」と中田さん。炭田君は「病院は管理されている感じだったが、在宅はそうじゃなかった」。赤羽医師は「在宅医療はオーダーメイド。専門ごとに分かれている病院と違って、患者の求めに応じて専門外のこともやらないといけないんだよ」と応じた。

 講座名は「医療現場で考える10年後の未来プロジェクト~体で感じる医療の現場」。中学2年~高校2年の計17人が参加した。メイン講師は、横浜市立市民病院緩和ケア内科の横山太郎医師(34)が務めた。

 今回の講座の特徴は、30代の医師や心理士らが中心になって、企画を練ったことだ。埼玉医大時代の同僚だった横山医師と松原さんは「将来の地域の担い手である子どもたちに、2025年問題について考えてほしい」と、教育関係のNPOやソーシャルワーカーらと、講座内容を議論した。熱意に動かされたベテラン在宅医が、中高生の訪問同行を無償で受け入れた。

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 3月28日、3回の講座を終えた12人が集まり、グループごとに「2025年問題~今の私たちにできること」をテーマに話し合った。まず講座で感じた問題点や解決策を次々と付箋(ふせん)に書き出し、机の上の模造紙に貼っていった。「医師不足」「介護する家族が大変」「在宅医同士が情報交換し、行政に要望を」「傾聴ボランティアならできる」……。約1時間の議論を経て、各グループが発表した。

 終了後、炭田君は「講座を受け、医療政策を動かす行政の仕事にも興味を持った」。中田さんは「将来は医師か看護師を考えていたが、他にも色々な職種があることがわかり、もう一度考えたい」と話した。

 4回の講座を振り返り、横山医師は「子どもたちから教えられることも多く、双方向の講座ができた。今後は、子どもたちがボランティアをするための拠点づくりなどにも取り組んでいきたい」と語った。

 <県内75歳以上149万人に>

 県の75歳以上の人口は、2010年に79万4千人だったが、25年には87%伸びて、約149万人になる見込み。病院のベッドは足りなくなり、自宅や介護施設での看取(みと)りを増やさないと、立ちゆかなくなる。

 今回の講座は、文部科学省のキャリア教育事業の一つで、NPO法人「教育支援協会」(横浜市)が事務局を務め、NPO法人「放課後NPOアフタースクール」(東京)などが運営に協力した。初回は2025年問題についての解説、2回目は横浜市立市民病院緩和ケア病棟を見学した。講座の問い合わせは、横山医師(taroman045@gmail.com)。

世代超え立ち向かう姿に希望(記者のひと言)

 2025年問題の取材を続けていると、正直、気持ちが少し暗くなることがある。だが、今回は違った。講座に記者(48)も参加し、中高生の感覚の鋭さや深さに、刺激を受けた。訪問診療同行の際には「死んだら命はどうなるのか」といった哲学的な話まで飛び出した。講座を企画・運営するスタッフも多くは30代。その熱意に共鳴したベテラン医師たち。世代を超え、2025年に立ち向かっていく姿に希望を感じた。

<アピタル:迫る2025ショック・取り組み編>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/2025/(佐藤陽)

佐藤陽

佐藤陽(さとう・よう) 朝日新聞Reライフプロジェクト室主査

朝日新聞Reライフプロジェクト主査。横浜総局記者時代に、神奈川の超高齢化の実態や取り組みを描いた「迫る2025ショック」を2年半連載した。6月20日に「日本で老いて死ぬということ」(朝日新聞出版)として発売される。早稲田大学非常勤講師。

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