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 認知症シリーズの最後は、若年性認知症についてです。近年「神経軸索スフェロイドを伴う遺伝性びまん性白質脳症(HDLS)」が原因の一つであることが分かってきています。大脳には「白質」とよばれる神経細胞の通り道があります。HDLSは大脳の白質が変性することで認知症を呈します。アルツハイマー病の方の脳でみられる脳細胞の減少は、HDLSでは目立ちません。

 HDLSは、多くの場合40~50歳代に発症します。初期にみられる症状としては、仕事や日常生活に影響を及ぼす認知機能の低下に加え、意欲がなくなる、引きこもるなどの精神症状も見受けられます。進行の過程では、動作が鈍くなる、歩きにくくなるといった運動異常症状や、けいれん発作が見られることもあります。

 同症を診断する上では、脳MRI検査が役立ちます。大脳白質に異常信号を認め、左右の脳を連結している脳梁(のうりょう)といわれる部位が薄くなります。CT検査では、カルシウムが沈着した石灰化と呼ばれる点状の変化が脳内に見られます。このような特徴的な画像所見に気付くことが、HDLSを診断するきっかけになります。

 この疾患の診断は、以前はとても難しかったのですが、現在は、ヒトの染色体のうちコロニー刺激因子1受容体(CSF―1R)という遺伝子を調べることで確定診断ができます。2012年に同遺伝子の変異が原因であることが分かったためです。その後、HDLSの方が世界中に相当数いて、中でも日本人には、比較的多いという特徴が分かっています。

 最近、健常な脳を維持する役割を担うミクログリアと呼ばれる細胞集団の働きが弱まることが、同症と深く関係することが分かってきました。今は、有効な治療法は未確立ですが、病気が起きる詳しい仕組みが分かれば、効果的な治療法の手がかりがつかめる日も遠くないでしょう。

(おわり)

(池内健・新潟大学脳研究所・教授(遺伝子機能解析学))

<アピタル:医の手帳・認知症>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/techou/

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