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 第15回のコラムでも「不妊の原因は男女ともにあり、できれば同時に両方の検査を進めた方がよい」というお話をしました。私は産婦人科医なので、自分が実際に診療を手がけるのは女性ですが、子どもができない原因の大きな割合を男性の不妊が占めているのは間違いありません。

 男性不妊の精密な検査は、泌尿器科医のなかでも不妊の専門医がいる医療施設を受診されることをお勧めします。しかし、不妊専門の泌尿器科医が少ないこともあり、女性の不妊診療科で検査することが多くなっています。また、女性の不妊クリニックでも、男性不妊専門医が診察日を決めて定期的に来られ、男性不妊の診療をしているところもあります。また、女性向けであっても男性不妊の専門医と提携しているクリニックもあります。

 治療の最初は問診です。現在までにかかった病気、特に、精巣の病気(停留精巣、精巣水腫、耳下腺炎症性精巣炎など)、脳の手術、がん治療(抗がん剤、放射線治療、手術)、鼠径(そけい)ヘルニア手術、慢性的な呼吸器の病気、糖尿病、脊髄(せきずい)の手術などについて、お聞きします。これらは、男性不妊を起こす可能性が含まれている病気なのです。これをお聞きするだけでも、これからの検査項目や治療法が決まってくることがあります。

 初診時の検査ですが、不妊専門の泌尿器科医だと、患者さんの同意が得られれば、外陰部の診察(精巣容積の測定、精索静脈瘤〈りゅう〉の確認・超音波検査など)まで行います。産婦人科の不妊専門医だと、まずは、それ以外の診察項目である、精液検査や内分泌検査をします。

仕事が忙しくてなかなか受診するのが難しい男性も多いですが、その場合でも精液検査だけは実施しておきたいので、あらかじめ、精液採取用の容器をお渡しし、家で精液を採取してもらい、その容器をパートナーに病院まで運んでいただいて、精液検査を行う場合があります。

 精液検査の正常下限値がWHOで決められており、下記の表のようになっています。1回の検査では断定しませんが、複数回の検査で、この値よりも低くなることが多い場合は、タイミング以外の治療を早めに行う場合があります。治療としては人工授精や体外受精などの生殖補助医療を含みます。また、男性不妊専門医に照会する場合もあります。

 もう一度念を押しますが、不妊原因は男女どちらにもあるので、不妊治療を開始する際は夫婦が同時に受診されることをお勧めします。

<アピタル:男女で知ってほしい「妊活」・不妊治療>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/ninkatsu/(アピタル・齊藤英和)

アピタル・齊藤英和

アピタル・齊藤英和(さいとう・ひでかず) 国立成育医療研究センター医師

専門は生殖医学、不妊治療。日本産婦人科学会・倫理委員会・登録調査小委員会委員長。内閣府の「少子化危機突破タスクフォース第二期」座長(2013-2014)。現在、内閣府「新たな少子化社会対策大綱策定のための検討会」委員を務める。