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作品で恩返し、誓い治療

 漫画家のアシスタントだった埼玉県所沢市の武田一義(たけだかずよし)さん(40)は2010年6月、左の睾丸(こうがん)がニワトリの卵大に腫れ、硬くなっていることに気づいた。痛みはなかったが、自宅から歩いて15分ほどの防衛医科大学校病院(所沢市)で診察を受けることにした。

 CT検査や血液検査のあと、泌尿器科の吉井秀彦(よしいひでひこ)医師(42)が結果を説明した。「精巣腫瘍(しゅよう)です。9割がた悪性でしょう」

 精巣腫瘍は進行が速い。その場で4日後の手術が決まった。「ジェットコースターに乗っているみたいだな」。手術の前日、さらに悪い知らせが来た。腫瘍は左肺に転移していることがわかったという。手術後に抗がん剤治療も受けることになった。

 吉井さんは「精巣腫瘍は、抗がん剤がよく効きます。しっかりと治しましょう」と励ました。

 いちばん心配だったのは、自分の体のことより、アシスタントの仕事のことだった。

 北海道岩見沢市で20代後半まで過ごし、高校卒業後はおもちゃ屋やリサイクルショップなどで働いた。しかし、幼いころから夢見ていた漫画家に挑戦してみたくて上京。やっとのことで「GANTZ」などのヒット作がある人気漫画家、奥浩哉(おくひろや)さんのスタジオに入り、中堅のアシスタントとして作品づくりにかかわっていた。

 レギュラーのアシスタントは当時6人。1人でも欠ければ、仕事が滞るのは目に見えていた。ただ、転移がわかったことで、長期の入院は確実となった。

 「せっかく手にした仕事だけど、辞めるしかないな……」。そう覚悟を決めた。だが、お見舞いにやって来た奥さんは、こんな言葉をかけてくれた。

 「迷惑をかけたくない気持ちもわかりますが、ここは、僕らに甘えませんか。アシスタント仲間でなんとか仕事は回しますから」

 その言葉で心を決めた。

 「まず病気を治そう。そして、退院したら、お世話になったみんなに、漫画で恩返しをしよう」

 治療の体験はのちに「さよならタマちゃん」という作品に結実する。武田さんにとっては、漫画家としてのデビュー作でもあった。

実体験描き独り立ち

 精巣腫瘍(しゅよう)が見つかった埼玉県所沢市の武田一義さん(40)は2010年6月、左側の精巣を切除する手術を受けた。検査の結果、腫瘍はやはりがんだった。肺に転移していたので、手術後に抗がん剤治療を受け、10月に退院した。

 当時、漫画家のアシスタントをしていた。「闘病生活のことを漫画にし、デビュー作にしてみよう」。入院中から決めていた。

 当初は、相部屋で起きるベッド…

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