初めての胃ろう Q&A(1)《スマホで視聴の方はここをクリックして下さい》
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 胃ろうという言葉を知っていますか? 口から食べられなくなったとき、おなかに穴を空けて管を使って胃に栄養を送り込む入り口のことを指します。家族が判断を求められる場面は、患者が救急病院に運ばれて一命はとりとめたものの、体が不自由になり、意思表示も難しくなったりしたときが多いと言われています。しかし、一般の人向けの胃ろうについての情報は、あまりないのが現実だと思います。アピタル編集部と横浜総局のコラボ企画「迫る2025ショックwith you」では、在宅療養する患者や家族や在宅医療に携わる医療者向けに、「在宅医ネットよこはま」の東部代表世話人、赤羽重樹医師(西神奈川ヘルスケアクリニック)に、「初めての胃ろう」と題して聞きました。(聞き手・佐藤陽記者)

※記事はインタビュー動画の一部、要約です。詳しくは動画を再生してお聞き下さい。

●造る側からフォローする側に転身した理由

【赤羽医師】病院に勤めていたころ、脳血管疾患や肺炎など栄養状態が悪い患者を多く診ていました。そのため胃ろうを造る機会が多くありました。ただ、その患者が転院したり、施設に入ったりした後、どうなっているのか分かりませんでした。退院した患者の家族に電話をしてみると、「ひどい目にあった」と言われたときがありました。造った後、放置されてしまった人が胃ろうに悪い印象を持っていることが分かりました。そのため、私は病院を出て、在宅医療を提供するクリニックを開き、胃ろうを造った患者をフォローをする側の医師になりました。

●胃ろうとは

【佐藤記者】胃ろうとは

【赤羽医師】腹部の皮膚から胃の内側に管を通し、そこから栄養剤や薬を入れていく仕組みです。《スライド(1)参照》

【佐藤記者】どんなときに胃ろうが必要となるのか

【赤羽医師】日本消化器内視鏡学会の胃ろう造設の適応として、次のようなものがあります。(※詳しい説明は、インタビュー動画をご覧下さい)

 ◆スライド(2)

 (A)経腸栄養アクセスとしての胃ろう造設

    脳血管障害   認知症などにより摂食できない

 (B)誤嚥性肺炎を繰り返す

    経鼻胃管留置に伴う誤嚥も含め

 (C)減圧目的

    胃から先に進めないため

    嘔吐を繰り返す場合

    (日本消化器内視鏡学会監修 消化器内視鏡ガイドライン参照)

《赤羽医師のプラスα》

 (D)造設後の管理体制の確保

    患者または家族、転院先や入所施設の理解と了承が十分得られている

    (造設した後の長期的な介護の手間の実際や経済的負担のことまで具体的に)

【佐藤記者】いろいろある人工栄養の中で、胃ろうの位置づけは

【赤羽医師】最近は、胃ろうというより人工的水分栄養補給法という言い方をします。口から取れないので補助的に入れてあげようという考え方です。《スライド(3)参照》(※詳しい説明は、インタビュー動画をご覧下さい)

【佐藤記者】腸から栄養を取った方がいい理由

【赤羽医師】経腸栄養のメリットは、主に3つあります。(※詳しい説明はインタビュー動画をご覧下さい)

 ◆スライド(4)

 ①管から吸収されると、まず肝臓(エネルギー貯蔵庫)に運ばれる。そして全身に安定した栄養供給が行われる。

 ②腸を使っていれば、腸管粘膜が萎縮しないため、腸内の外敵に対するバリア機能が保たれる。

 ③腸でリンパ球(免疫をコントロールする細胞)が成熟し、全身の免疫力を保っている。

 これらの次に、胃ろうとしては、経鼻胃管と比べて、つらい管が長い間入っているよりは、胃ろうの方が食べる訓練がしやすくなるということがあります。

【佐藤記者】胃ろうを造ると、口から食べられなくなるというイメージがありますが

【赤羽医師】状態によりますね。少しずつ食べられればということになりますが、唾液すら誤嚥している人、唾液でむせている人は口から食べることは危険です。唾液を飲めているなら少しずつ口から食べていく訓練ができると思います。胃ろうを造ったから食べられないというレッテルを貼るのは極端な話です。少しずつ、胃ろうから栄養を入れながら、口から食べられるように導いてあげる段階的な手法として胃ろうがあれば、患者が再び食べられる機会を得られるのではないでしょうか。

【佐藤記者】どのような病気の場合、胃ろうを造るのか

【赤羽医師】具体的にいうと、突然、脳梗塞を発症したとき、神経難病のとき、のどから食道にかけてがんなどの病気ができたときです。

【佐藤記者】家族はどう対応したらいいのか

【赤羽医師】家族が一番迷われるのが、突然、脳梗塞や脳出血などで倒れ、救急病院に運ばれた時です。考える時間、心の準備の時間がない時です。それまで元気で自分で食事やトイレ、入浴ができた人が倒れて、救急病院に入院して治療をします。重症ですから、医師は生きるか、死ぬかという話をされますが、一命をとりとめた状態でその後に点滴が抜けて、腸も使えそうだということになると経鼻胃管を入れて胃に栄養を入れていきます。寝たきりになって鼻から管が入っている、腸は使えているが、手足は動かない状態で、医師から胃ろうを造ったらどうですかと勧められても、家族はなかなか受け止めることができず、悩まれることが多いと思います。《スライド(5)参照》

【佐藤記者】胃ろうを外すことはできるのか

【赤羽記者】外すことはもちろん可能ですが、私が患者を診ていてかなり食べられるようになっても、風邪をひいたり、体調を崩したりすると2~3日食べられなくなることがあります。その時に、胃ろうが残っていると、そこから水分や薬を入れることができるので、入院しなくて済みます。どうしても嫌だという人もいるので管を抜くことはできますが、保険のような感じで残しておいてくれた方が助かります。

【佐藤記者】患者の意識がないとき

【赤羽医師】基本的には、患者が元気なときに胃ろうについて「絶対嫌」なのか、「迷っている」か、医師と患者が話をすることができればいいですが、多くの家族は「縁起でもない」ということになります。日本人の感覚からすると、そういう話をしていない家族が多いと思います。理想としては、患者本人が判断してくれることがいいですが、現実には家族が判断することが多いです。そうすると、家族にはつらいものがあって、造らない判断をすることで「見殺しにしてしまったのではないか」という思いを感じてしまいます。多くの家族は、「だったらやってみようか」という判断をします。医師として、その後に幸せになった方から不幸になった方まで経験すると、患者本人が家族に望むか望まないかを事前に伝えておくと、家族は迷わないと思います。

■■次回は「胃ろうを造るときの目安」について考えています■■■

<アピタル:迫る2025ショック with you・胃ろう>

http://www.asahi.com/apital/channel/withyou/(田之畑仁、佐藤陽、岩崎賢一)

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