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 入院した際に利用する病室にはいろいろなタイプがあります。場合によっては、特別な費用負担が求められます。今回は、その費用について考えましょう。

 病室を患者の費用負担の面から大別すると、差額室料(差額ベッド代)の必要な病室とそうでない病室があります。差額室料(差額ベッド代)とは、健康保険の適用されない特別な費用を指します。この費用負担を患者に求めることのできる病室は、定員が4人以下で、プライバシーに配慮した設備や広さを備えています。個人用の私物の収納設備や照明、小机や椅子なども有した、いわば「特別室」というわけです。

 通常、入院時に受ける医療サービスは健康保険適用のものであり、病室に関しても、患者の同意がない場合や治療上の必要性により「特別室」に入院させられた場合、差額室料(差額ベッド代)の負担は発生しません。病棟管理といった医療機関側の事情により「特別室」に入院させられた場合も、差額室料(差額ベッド代)の負担は生じないのです。あくまで、患者が実質的に「特別室」を選択した場合にこの差額室料(差額ベッド代)の負担が発生します[1]。

 差額室料(差額ベッド代)の負担を患者に求めることになった背景には、入院時の療養環境の向上に対する国民のニーズがあります。厚生労働省が、患者の選択の機会を広げるために、一室あたりの病床数や一人当たりの面積などに関して一定の要件を満たす病床であれば患者に妥当な範囲の負担を求めることを認めているのです。

 ただ、この差額室料(差額ベッド代)については、医療機関と患者との間でトラブルが生じることもあります。差額室料(差額ベッド代)の必要な「特別室」への入院に関して、患者の同意があったかのどうか、患者が「特別室」を選択したのかどうか等のトラブルです。それら次第で、患者に負担が生じるかどうかが変わってくるからです。皆さんもこのようなトラブルにあわないために、入院時には医療機関の説明にしっかりと耳を傾け、不明点があれば確認し、そして、退院時の領収証にもきちんと目を通すことが大切です。

 参考までに、医療機関が差額室料(差額ベッド代)を患者に求めてはならない場合ついての厚生労働省の通知(抜粋)を記載しておきます。

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<厚生労働省、保医発0326第1号、平成26年3月26日>

【特別の料金を求めてはならない場合】

① 同意書による同意の確認を行っていない場合(当該同意書が、室料の記載がない、患者側の署名がない等内容が不十分である場合を含む)

② 患者本人の「治療上の必要」により特別療養環境室へ入院させる場合

(例)

・救急患者、術後患者等であって、病状が重篤なため安静を必要とする者、又は常時監視を要し、適時適切な看護及び介助を必要とする者

・免疫力が低下し、感染症に罹患するおそれのある患者

・集中治療の実施、著しい身体的・精神的苦痛を緩和する必要のある終末期の患者

・後天性免疫不全症候群の病原体に感染している患者(患者が通常の個室よりも特別の設備の整った個室への入室を特に希望した場合を除く)

・クロイツフェルト・ヤコブ病の患者(患者が通常の個室よりも特別の設備の整った個室への入室を特に希望した場合を除く。)

③ 病棟管理の必要性等から特別療養環境室に入院させた場合であって、実質的に患者の選択によらない場合

(例)

・MRSA等に感染している患者であって、主治医等が他の入院患者の院内感染を防止するため、実質的に患者の選択によらず入院させたと認められる者

▼参考資料

[1]厚生労働省, 「「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」及び「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の実施上の留意事項について」の一部改正について, 保医発0326第1号, 平成26年3月26日.

<アピタル:健康にまつわるお金の話・医療>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/money/(アピタル・古川雅一)

アピタル・古川雅一

アピタル・古川雅一(ふるかわ・まさかず) 東京大学大学院特任准教授

東京大学大学院特任准教授、京都府立医科大学非常勤講師。京都大学大学院経済学研究科修了後、京都大学経済研究所、立教大学ビジネスデザイン研究科を経て現職。専門は、医療経済学、行動経済学。博士(経済学)。テレビ、ラジオ、講演を通じて時事問題や学術研究の解説に努めている。主な著書「ねじれ脳の行動経済学」他。