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まだまだ寒い日が続きます。車いすユーザーにとって、相性の悪い天候ナンバー1は「雪」なのではないでしょうか。雪深い日には、足腰の立つ人でも細心の注意を払わなければなりません。ましてや、車いすユーザーにおいては外出そのものを阻む要因にもなり得ます。

強い寒波が九州を覆った1月下旬、あまり雪の積もらない九州・筑後地方でも10~30センチメートルの積雪となりました。私も例に漏れず外出が困難となり、家にこもることに・・・。

1月24日の日曜日でした。数日前からの予報(大雪警戒)が当たり、しんしんと雪が降り続きます。白くなる街並みに、翌日の通勤が心配になってきました。どうやって行こうかと話していると、午後8時、携帯電話に着信が入ります。上司の名前が表示されているのを確認し慌てて応答すると、用件は次のようなものでした。

「今晩から明日にかけて、雪がひどくなる見込み。明朝は無理をせず、安全を確保してから出勤するように」。年度当初に作成された緊急連絡網は、こういう時にも使われるんだと感心しつつ、積雪の影響を再認識しました。「明日の通勤手段は、いつもどおりの自動車なのか、徒歩かタクシーか」と、シミュレーションをしてから眠りにつきます。

25日、月曜日。いつもより早起きをして窓の外を見ると、一面の銀世界。「雪だー!」 と、一瞬テンションが上がったものの、すぐに現実に引き戻されます。この状況ではたして、出勤できるのか? 懸念を晴らすため、マンションの下まで降りてみました。しかし、15センチメートルの積雪では、マンションに面した歩道に出ることさえままなりません。ダメもとで突入してみても、車いすの前輪とフットレストが雪にめり込むだけ・・・。これでは自家用車へもたどり着けないので、車通勤と徒歩(車いすでの)移動が選択肢から消えることになります。

自宅へ引き返し、タクシー会社へ電話をかけてみました。A社、B社、C社・・・、いっこうにつながる気配がありません。ようやくつながったかと思えば、雪で予約殺到、出払っているとのこと。やはり、みな考えることは同じのようです。

それもそのはず。高速道路の通行止めに始まり、電車・バスの全面運休。この辺りの公共交通機関は全滅だったのです。

午前8時30分、手を尽くした結果の出勤困難の旨を会社へ報告することにしました。職場もまばらな人出だそうで、あらためて雪のひどさが伺えます。「積雪による出勤不能につき、自宅待機」となりました。

路線バスの運行再開を出勤の目安にしようとバス会社の情報を注視しながら、頃合いを見て外の様子を伺うこと複数回・・・。ようやく出勤できたのは、午後2時30分のことでした。

車いすで生活をするようになって早12年、これだけの積雪に見舞われたのは今回が初めてです。実は昼前に車道の雪が溶け始めたころ、自動車の走行は可能になっていました。しかし、歩道の雪はしっかりと残っていて、車いすでの走行は相変わらず困難な状況だったのです。積雪時、車までのわずかな道のりを進むことが、こんなに大変だとは思いもしませんでした。雨の日の外出も大変だけれど、雪はその比ではありません。誰もが雪に弱いけれど、車いすはもっと弱い! というのを痛感したと同時に、雪対策の必要性を感じました。

拡大する写真・図版イラスト:ふくいのりこ

<アピタル:彩夏の“みんなに笑顔を”>

http://www.asahi.com/apital/column/ayaka/(アピタル・樋口彩夏)

アピタル・樋口彩夏

アピタル・樋口彩夏(ひぐち・あやか)

1989年、東京生まれ。中学2年の時、骨盤にユーイング肉腫(小児がん)を発症。抗がん剤、重粒子線などの治療を経て、車いすでの生活に。「いつ、誰が、どんな病気や障害をもっても、笑顔で暮らせる日本にしたい!」を目標に日々、奮闘中。当事者の視点から建設的に伝えることをモットーに執筆・講演も行っている。