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 「家に帰されたら困る人に、訪問介護の手配がつくまで病院にいてもらうのも高齢者医療の大事な役割だから」(岩手県立高田病院の石木幹人院長、2011年4月24日付「被災地医療 綱渡り」)

 震災当時、岩手県立高田病院があった陸前高田市の市街地は今、大規模な造成がすすめられています。大津波にも耐えられるように。2011年3月11日、高田病院長だった石木幹人さんは今、高齢化が進む陸前高田市を含む気仙地区の地域包括ケア体制の充実に向けて、医療、介護、福祉の連携に尽くしています。

拡大する写真・図版陸前高田市地域包括ケアのコーディネーター、石木幹人さん

岩手県陸前高田市 医師 石木幹人さんからのメッセージ

 被災から5年経ち、ようやく終(つい)の棲家(すみか)ができ始めている陸前高田です。マンション形式の復興住宅が一昨年の秋を皮切りに、次々と完成し、仮設住宅や周辺都市から移住してきています。集団移転のために、山を削り高台にし、住宅地としたところも土地の引き渡しが進んでいて、昨年の暮れから建築ラッシュが続いています。高台から削り取られた土砂は、一時保管場所である低地に積まれていましたが、復興計画にあるかさ上げ地への移動が本格的になされ、少しずつかさ上げ地の概要が目に見えるようになってきています。空き部屋が目立ち始めている仮設住宅も出てきて、ようやく集約の話が、今年になり持ち上がってきました。

 復興に向けた取り組みが、一つ一つ目に見えるようになってきました。しかし、住民が最も待ち望んでいる市街地(商業地域)は、かさ上げ地に立ち上がることになっており、その完成はさらに2年、それから建設ラッシュが始まり完成までにはさらに数年かかると思われ、景観上の復興はまだ4~5年かかりそうですし、魂を入れる作業なども考えると、本当の意味での復興はまだまだ先のことのように思えます。

拡大する写真・図版陸前高田市で進むかさ上げ工事

 医療・介護などの復旧は、全国からの支援が入り比較的早く供給体制が立ち上がったと思っています。私が勤めていた岩手県立高田病院も、仮設の外来棟が2011年7月26日、41床の入院病棟が2012年2月1日に運用開始となりました。新病院は高台の造成がほぼ完成し、今年の秋から着工の見通しが立ってきています。新規参入の医療施設や介護施設もでき、全体の幅が広がってきています。

 しかし、医療・介護のスタッフの少なさが問題になっており、せっかくできた介護施設の開設が縮小されたり、訪問診療などが思うように出来ていなかったりしている現実もあります。医師・看護師・介護職の確保が、やはり医療過疎地の現実として持ち上がっています。

拡大する写真・図版陸前高田市にできた復興住宅

 高齢化率が30%を超え、年々高くなっている陸前高田市です。地域によっては50%超えの限界集落に近づいているころも散見されます。その対応として取り組んでいるのが、陸前高田市の介護予防に対する、各種プログラムです。一本松クラブや陽だまりクラブの名のもとに、高齢者の介護予防を通年でやっています。介護が必要になった住民に、適切な介護や医療を提供するためには、各職種の連携が大変重要になってきます。

 その目的で「陸前高田市の在宅療養を支える会」、愛称「チームけせんの和」が2013年に立ち上がっています。各職種の技術をあげ、それを他の職種にも波及させ、連携を深めることを目標にしています。2015年から住民への介護予防の啓蒙の一環として劇団「バババ☆」を立ち上げ、「減塩食の勧め」「口腔ケア」「転倒予防」をテーマに演劇を作り公演しています。

 被災から5年、あの時から時間が止まっている部分を抱えながら、超高齢化社会へ対応できる地域作りにかかわっていきたいと思います。

拡大する写真・図版「劇団バババ☆」による劇「減塩食の勧め」の様子

略歴

1947年   青森市生まれ

1971年   早稲田大学理工学部卒業

1979年   東北大学医学部卒業

1979年   東北大学抗酸菌病研究所外科入局

1985年   宮城県立瀬峰病院外科医長

1987年   岩手県立中央病院呼吸器外科医長

1997年   岩手県立中央病院呼吸器外科長兼臨床研修科長

2004年   岩手県立高田病院院長

2013年   岩手県医療局理事兼岩手県立高田病院リハビリテーション科長

2013年   陸前高田市の在宅療養を支える会―チームけせんの和 会長

2014年3月 岩手県医療局退職

2014年4月 岩手県医療局名誉院長

2014年5月 陸前高田市地域包括ケア コーディネーター

2011年3月11日被災した岩手県立高田病院にいて、患者、一般避難住民、職員たちと病院に取り残され一夜を病院の屋上で過ごし、12日救出された。2014年3月、高田病院を退職。現在は高田病院へ週2回通い、認知症関係の診療にあたるとともに、陸前高田市地域包括ケアコーディネーターを務める。また、陸前高田市の少子高齢化社会への対応を目的とした「チームけせんの和」の会長として、医療・介護・福祉関係者らから意見聴取を行うなど、気仙全域を視野に入れた良質な地域包括ケアを構築するために動いている。

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<アピタル:東日本大震災・被災地からのメッセージ>

http://www.asahi.com/apital/special/shinsai/(岩崎賢一)

岩崎賢一

岩崎賢一(いわさき・けんいち) 朝日新聞記者

1990年朝日新聞社入社。くらし編集部、政治部、社会部、生活部、医療グループ、科学医療部などで、医療を中心に様々なテーマを生活者の視点から取材。テレビ局ディレクター、アピタル編集、連載「患者を生きる」担当を経て、現在はオピニオン編集部。『プロメテウスの罠~病院、奮戦す』、『地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン』(分担執筆)