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年度が変わろうとしているこの時期は、人事異動の季節です。学校や会社など、1年の区切りを年度で設けているところも多いのではないでしょうか。私の勤め先では、4月1日の発令で異動が行われるのが通例です。内示を目前に控えた今(3月22日)、胸の内は穏やかではありません。

人生設計――。誰もが思い描いていることでしょう。学校を卒業して、就職をしたら、バリバリ働いて・・・。恋をして、結婚をしたら、子供もほしい。退職をしたら、こんな老後を送りたいな・・・。などなど。加えて、働いている人であれば、それに応じたキャリアプランも考えていくはずです。こういう仕事をしたいから、いつまでにこの資格をとろう。この部署とあの部署を経て、あそこに配属されたい。などなど。

けれども、その思考過程は「病気」や「障害」によって、たびたび遮られます。 "いつ、どうなるか分からない"という点においては皆同じですが、持病や障害のある人はそれらを踏まえた上で将来を考えなくてはなりません。純粋に理想を描けるわけではなく、さまざまな制約が生じてきます。

たとえば、企業に属する私が社内でのキャリアを考えるとき、つぎのような思考をたどります。

やはりキャリアプランなので、まずは前向きに、障害を抜きにして志ありきで考えたいところです。「こういう仕事がしたい!」という希望から、A庁、B課、C所、D所、E局の5つの部署が浮かび上がってきました。

つぎは現実的な問題を重ね合わせ、"希望"を精査していきます。業務内容は過度な負担なく従事できるか? 職場のハード面は、車いすで支障はないか? これらを考慮して残ったのは、A庁、C所、D所の3つ。大本命のE局が選択肢から消えてしまったのは、結構ショックです・・・。

では、上記3カ所は実際に通勤できるのでしょうか?

◇A庁: 自宅から車で2時間。さすがに往復4時間の通勤は身体にこたえるので、職場近くへ引っ越す必要がありそうです。しかし、車いすで住める家を予算内で見つけるのは難儀なわけで・・・、微妙なところですね。

◇C所: 自宅の近くなので、何も問題はありません。

◇D所: 自宅とA庁の中間くらいに位置しています。実家からの通勤でもよいし、一人暮らしをしてもよいし、どちらでも対応できそうです。

ここでのポイントは、一人で暮らせるか否かという点でしょう。体調や日常生活を振り返ったとき、それが可能であれば、A庁、C所、D所のすべてが選び得ることになります。けれども、一人暮らしが難しいとなれば、C所、D所の2択になるわけです。

どんどん狭まっていく、選択肢。はじめは5つあったものが、3(2)つまで減ってしまいました。持病や障害のある人が働くとき、住居・通勤手段・勤務地・社屋の構造・業務内容とキャリアプランを狭める要因がたくさん潜んでいるのが現状です。次回は、車いすユーザーの住宅事情に迫ります。

拡大する写真・図版イラスト:ふくいのりこ

<アピタル:彩夏の“みんなに笑顔を”>

http://www.asahi.com/apital/column/ayaka/(アピタル・樋口彩夏)

アピタル・樋口彩夏

アピタル・樋口彩夏(ひぐち・あやか)

1989年、東京生まれ。中学2年の時、骨盤にユーイング肉腫(小児がん)を発症。抗がん剤、重粒子線などの治療を経て、車いすでの生活に。「いつ、誰が、どんな病気や障害をもっても、笑顔で暮らせる日本にしたい!」を目標に日々、奮闘中。当事者の視点から建設的に伝えることをモットーに執筆・講演も行っている。