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車いすで生活をしている私が、一人暮らしをはじめる。そんなことを仮定してみました。

そして、家探しは困難を極めることを実感しました。

就職して4年目。今春は異動対象だったので、もしもに備えて簡単に"物件探しのシミュレーション"を試みました。しかし、結果は悲惨なものです。出だしからつまずき、本当に見つかるのか? と疑問に思うほど、苦戦しました。至った結論を先に言うと、「車いすの一人暮らしはマンションを狙え!」です。

今回の「物件探し(仮)」では賃貸住宅情報サイトをもとに、現在の福岡県久留米市から福岡市博多区に転居することを想定して、「単身20代」、「歩行不可の車いすユーザーが住める家」を探しました。絞り込んでいった結果は以下の通りです。

こんなに減ってしまうなんて、驚きです。博多区と言っても広いので、実際はエリアがもっと特定されることを考えると、選択肢はないに等しいような気がしてきます。

上記のような要領で物件を探すわけですが、根本的な問題にぶつかりました。

【課題】 適切な"絞り込み条件"を選択できない

情報サイトで物件を探すとき、地域や家賃、間取り、面積など、好みの条件で物件を絞るところからはじまるかと思います。このとき、車いすユーザーが求める条件では、なんと言っても「段差なし=バリアフリー」が最優先となるでしょう。しかし、その項目があるサイトは6社中2社しかありませんでした。

さらに、その2社に至っては「バリアフリー」の定義が問題です。「バリアフリー」で抽出されたある物件について、間取り図を見てみると、どうやら階段があるようです。電話で問い合わせると、メゾネットタイプの部屋で車いすでは難しいとのことでした。では、なぜ「バリアフリー」と表記していたのでしょうか? 回答は"床がフラットだから"という理由(!?)で、高齢者など多少足腰に不安のある人の利用を想定したものだったようです。

そして、とくに注視すべきポイントは以下のとおりです。

【チェックポイント(1)】 段差・階段の有無

車いすだと段差や階段のあるところでは移動ができないので、室内がフラットな物件というのは絶対条件と言えます。ここで見落としがちなのは、玄関までのアプローチでしょう。アパートなど低層階の物件の場合、1階なら大丈夫! と思ってしまいがちですが、そこに落とし穴があります。1階といえども、玄関までに2、3段の階段がある物件も多くあります。しかし、そんな何げない階段は、多くの歩ける人にとっては意識に残らないので、車いすの人がいざ内見に行ってみて、ダメだと気が付くのです。建物の外観写真で、しっかりと確認をしなければなりません。

【チェックポイント(2)】 駐車場

駐車場は「平地がマスト! かつ、広めor端っこ」が定石です。なぜなら、自動車への乗り降りの際に車いすの積み下ろし動作が発生するので、ドアを全開にするだけのスペースが不可欠だからです。よって、立体駐車場は原則として使えません。また、一枠に十分な広さがない場合は、端っこの枠を使用することで対処する必要があります。

【チェックポイント(3)】 トイレ・お風呂

移乗動作がとれる環境であるか、しっかりと確認をします。写真だけでは判断できないので、内見は欠かせません。もし、手すりなどの補助具が必要な場合は、とりつけていいかを事前に確認する必要があります。

【まとめ】

車いすで住める家を探す上では、WEBサイトに載っている情報が当てにならないことも多いのが現状です。かと言って、求めている情報を不動産屋さんが把握しているかと言えば、それも怪しいところでしょう。内見の数をこなすしかなさそうですが、それも現実的ではありません。本当なら、知りたいことをきちんと反映したWEBサイトで事前にある程度、数を絞り込んでおけるのが理想なのですが。

また、「車いすはお断り」と言う不動産屋もあるようです。電話で問い合わせた際、「車いすはちょっと・・・。畳とか傷つきますよね・・・」と、難色を示されました。おそらく原状回復が期待できないと考えているのだと推察します。

今回はあくまでも「物件探し(仮)」なので追求はしていませんが、本番を思うと気が遠くなる調査となりました。車いすで一人暮らししている方は、どんなところに住んでいるのか、どうやって探したのか、知りたくなってしまいました。

拡大する写真・図版イラスト:ふくいのりこ

<アピタル:彩夏の“みんなに笑顔を”>

http://www.asahi.com/apital/column/ayaka/(アピタル・樋口彩夏)

アピタル・樋口彩夏

アピタル・樋口彩夏(ひぐち・あやか)

1989年、東京生まれ。中学2年の時、骨盤にユーイング肉腫(小児がん)を発症。抗がん剤、重粒子線などの治療を経て、車いすでの生活に。「いつ、誰が、どんな病気や障害をもっても、笑顔で暮らせる日本にしたい!」を目標に日々、奮闘中。当事者の視点から建設的に伝えることをモットーに執筆・講演も行っている。