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 高校生活の最後を飾る大会になるはずでした。埼玉県の池田歩さん(23)は2010年、小学3年生から続けてきた柔道をやめる決意で臨んだ試合で、首の骨を脱臼骨折する大けがをしました。運ばれた病院で医師が両親に「一生、歩けなくなる」と告げるのを耳にしました。数カ月後、車いすで退院しましたが、再び高校へ戻ることはできませんでした。1日の大半を自宅のベッドで過ごす生活が3年近く続いたある夜、変化が訪れます。

 

柔道の試合中、首に激痛

 柔道を始めて10年目。高校生活最後の大会だった。

 2010年5月、埼玉県熊谷市で開かれた春季地区高校柔道大会個人戦70キロ級。当時高校3年生の池田歩(いけだあゆむ)さん(23)は、1回戦で一本勝ちし、準決勝に臨んだ。

 小学3年生の時、体格の良さを理由に勧められ、道場通いを始めた。すぐに頭角を現し、県大会でたびたび入賞。きれいに一本勝ちを決めた時の気持ちよさや、身が引き締まるような畳の上の空気が好きだった。練習した分、強くなれた。

 小中高校を通じて柔道に打ち込み、大学受験を控えて引退を決意した。進学して海外留学する夢があった。高校では文化祭の実行委員長に立候補。友人に囲まれ、充実した毎日を送っていた。

 その日は、共働きだった両親も、珍しくそろって会場に来て、試合を見守った。

 「はじめ」という審判の合図で相手と組み合った。それから約1分後に、事故が起きた。

 対戦相手が池田さんに背負い投げをかけたが決まらず、寝技に転じようとした。うつぶせになった池田さんの柔道着のズボンをつかんで足を持ち上げ、池田さんの頭が畳についた状態で、仰向けにしようとした時だった。

 「ゴギッ」。鈍い音とともに、首に激痛が走った。次の瞬間、首から下の一切の感覚がなくなった。「やばい」。そう直感した。

 異変に気付いた審判が試合を止めた。畳の上に仰向けに寝かされたが、自分の足がどんな向きをしているのかもわからなかった。

 救急車が呼ばれた。会場の視線が一斉に集まるのを感じながら、かつて見た映画を思い出した。主人公がボクシングの試合で首を骨折して全身まひになり、最後は亡くなるストーリーだった。

 「私、死ぬんだ。死んじゃったら文化祭できないな……」。駆けつけた母親の久美子(くみこ)さん(62)に「お母さんごめんね」と言った。

 搬送された県内の総合病院で、首のX線やMRI検査を受けた。ベッドに寝ていると、カーテン越しに、医師が両親に話す声が聞こえた。

 「一生、歩けなくなると思います」

 

自分の姿、受け入れられず

 高校の柔道の試合で首を負傷した埼玉県の池田歩さん(23)は2010年5月、搬送先の県内の総合病院で「一生歩けない」という医師の言葉を耳にした。しかし、現実とは思えず、「努力すれば何とかなる」と信じた。

 けがは、首の七つの骨「頸椎(けいつい)」のうち上から5、6番目の脱臼骨折。頸椎の中を通る脊髄(せきずい)の一部が傷つき、手足が自由に動かないまひや、さわっても感じない感覚障害が残った。体を支える体幹機能を失い、支えなしでは座っていることもできなくなった。

 ベッドの上で頭と首、胴体を器具で固定された。自分では体を動かせず、痛みも感じない。床ずれを防ぐために2時間おきに体の向きをかえてもらった。

 「また歩けますよ…

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