写真・図版

[PR]

 今から20~30年くらい前までは、日焼けした肌は健康な証拠だと言われていました。日光浴は奨励されていたし、私が子どもの頃に読んだ本には「子どもは子どもらしく外で遊んで真っ黒になりましょう」というようなことが書いてありました。しかし、ガン予防・肌の老化防止のためにUVケアしようというのが現在の風潮です。そんな中、小児科医として気になる病気の報告が増えています。1~2歳で見つかるビタミンD欠乏症、くる病です。

 

 子どものビタミンD欠乏症を発見するきっかけになるのは、低カルシウム血症になることから起こるテタニー(筋肉が硬くなり動かせなくなること)やけいれんで、血液検査でカルシウムとビタミンDが低下していることからわかります。子どものくる病は、低身長、歩行開始の遅れ、脚の変形、歩行時の脚の痛みなどの症状で疑われ、レントゲン写真を撮って骨の状態をみると診断がつきます。

 

 どちらの病気も戦後間もない頃の栄養状態の良くない時代に、日照時間の少ない北日本ではよくあるものでした。20年ほど前までほとんど見られなかったのに、また増えてきたのは次の3つが原因ではないかと言われています。1)母乳中のビタミンDが少ないこと、2)離乳食の遅れや制限、3)紫外線対策のやりすぎ。

 

 まず1)と2)について。母乳は子どもが生後6ヶ月までは完全栄養なので、母乳以外のものをあげる必要はありません。でも、次第に母乳に入っている栄養素だけでは足りなくなります。必要量が増加するからで、この5~6ヶ月頃に離乳食を開始します。ビタミンDは魚類、キノコ類、鶏卵に多く含まれるので偏りなく食べるようにしましょう。

 

 3)の紫外線対策ですが、紫外線量が多いニュージーランドやオーストラリアの白色人種に皮膚ガンが多いことが知られています。しかし日本人は彼らの100分の1しか皮膚ガンになりません。成長期の子どもで、バランスのとれた食事をなかなか食べられない場合は、ある程度紫外線に当たる必要があるんです。

 

 体内で必要とするビタミンD生成に要する日照時間の推定という国立環境研究所の調査があります(https://www.nies.go.jp/whatsnew/2013/20130830/20130830.html別ウインドウで開きます)。

写真・図版

 それによると日本は南北に長いので、緯度の高い北のほうはたくさん紫外線を浴びる必要があるけれど、沖縄だったら短時間でも大丈夫です。

 

 この推定時間を過ぎて日光に当たる夏は、紫外線対策が必要になってきます。2015(平成27)年に臨床皮膚科医会、日本小児皮膚科学会が統一見解を出しました(http://jspd.umin.jp/pdf/201509.pdf別ウインドウで開きます)。上手な紫外線との付き合い方のヒントがのっています。

 

 子どもにとって外遊びは大事ですから、時間と場所を選びましょう。夏は10~14時が紫外線量の特に多い時間帯です。日陰は日向に比べて紫外線が50%減ります。曇りの日でも、晴天の時の80%の紫外線量があります。帽子や衣服で体を覆うことは大事。目への紫外線の影響は7cm以上のつばがある帽子で60%減らすことができます。

 

 日焼け止めクリームなどは、2~3時間ごとに塗り直さないと効果は減っていきます。子ども用の日焼け止めクリームを塗る方法もありますが、乳児だったら風通しの良い長袖、長いボトムのほうがいいかもしれません。紫外線カットのためには目の詰まった布の方がいいし、熱中症予防のためには黒などの暗い色ではなく、白っぽい明るい色の服がいいです。

 

 もしもお子さんが日焼けしすぎて、触っても痛がるとか水疱ができてしまったら、皮膚科にかかりましょう。

 

 また日差しが増えるだけでなく、気温や湿度が高くなる夏は熱中症が増えます。特に乳幼児は熱中症になりやすいので、前述の紫外線対策とともに水分と塩分をこまめに補給して、涼しい環境を心がけましょう。

 

 ◇次回は、6月6日に掲載予定です。

 

<アピタル:小児科医ママの大丈夫!子育て>

http://www.asahi.com/apital/column/daijobu/(アピタル・森戸やすみ)

アピタル・森戸やすみ

アピタル・森戸やすみ(もりと・やすみ) 小児科医

小児科専門医。1971年東京生まれ。1996年私立大学医学部卒。NICU勤務などを経て、現在はさくらが丘小児科クリニックに勤務。2人の女の子の母。著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(内外出版)、共著に『赤ちゃんのしぐさ』(洋泉社)などがある。医療と育児をつなぐ活動をしている。