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 自然の雪山を滑るバックカントリースキーに出かけた名古屋市の会社員宗近栄治(むね・ちか・えい・じ)さん(43)は2011年1月、長野県の白馬山麓(さん・ろく)にある「天狗原(てん・ぐ・はら)」から下山中に遭難しました。「もう限界」と感じた3日目、捜索していた長野県警のヘリコプターに発見されました。重度の低体温症で、突然心臓が止まってもおかしくない状態でした。手足の指の凍傷もひどく、切断する可能性もありました。

 

◇もう一つのストーリー◇

 白馬山系の雪山でバックカントリースキー中に遭難した名古屋市守山区の会社員宗近栄治(むね・ちか・えい・じ)さん(43)は、救出後に捜索費用の一部を請求されました。

民間の救助・捜索は有料

 搬送先の病院を退院してしばらくすると、自宅に「請求書」が届いたそうです。送り主は、長野県警大町署管内の有志で組織する「山岳救助隊」。請求額は約40万円でした。

 宗近さんの捜索には、大町署員のほか、この山岳救助隊のメンバー8人も参加していました。警察や自衛隊ならば、遭難者に捜索費用の負担を求めることはありませんが、民間組織は別です。

 山岳事故が多い長野県では、県内22警察署すべてに、地元の登山経験者らでつくる山岳救助隊があります。大きな署では200人以上の登録者がいて、遭難や事故の規模によって出動します。

 宗近さんが払った約40万円の主な内訳は、救助隊員8人の2日分の人件費や車両費、捜索中の負傷などに備える保険料でした。もし民間のヘリコプターも依頼していたら、もっと高額になっていたでしょう。

山に登るなら保険は必須

 このお金は、事前に入っていた民間の山岳保険でまかなうことができました。山岳保険の中には年間5千円から1万円程度の掛け金で、遭難したときの救助にかかった費用や、けがをしたときの治療代などがカバーされるものがあります。宗近さんは「もしものことがあっては」と加入していました。

 国際山岳医の千島康稔(ち・しま・やす・とし)さん(54)は「山を登る人にとって、民間保険に入ることは、水筒や食料を持つのと同じくらい大事なことです」と話しています。

 

※ご意見・体験は、氏名と連絡先を明記のうえ、iryo-k@asahi.comメールするメールするへお寄せください。

 

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【患者を生きる・山岳遭難】

山スキー、順調のはずが

 名古屋市守山区の会社員、宗近栄治(むねちかえいじ)さん(43)は2011年1月、長野県北部の白馬山麓(さんろく)にある「天狗原(てんぐはら)」(標高2200メートル)を目指して、新雪の中を1人でスキーで登っていた。

 天狗原は、整備されたスキー場でなく自然の雪山を滑る「バックカントリースキー」の人気スポットとして知られている。それまで3回挑戦したが、悪天候のため途中で下山していた。

 「この調子で進めば、正午ごろには天狗原に着けるな」

 バックカントリースキーを始めたのは10年ほど前から。「会社や世間から離れた非日常の世界」に魅せられた。1人で雪山に入って最善のルートを取り、雪崩の危険性などに注意を払いながら、スキーをはいて新雪の山を登ったり滑り降りたりするのを楽しんだ。

 当日の天気予報は雪だった。登るにつれて雪が強くなったが、前が見えないほどでもない。前夜に積もった新雪は深いものの、スムーズに進んでいた。

 予定通り、天狗原には正午前に到着した。しめ縄を巻いた祠(ほこら)がぽつんと建っていた。リュックからポットを取り出してお湯を飲み、菓子パンを一つ食べた。自分で記念に写真を撮り、20分ほどで来た道を戻り始めた。ふもとにある民宿に午後3時にはチェックインできるだろうと見込んだ。

 「ここまで来たから、違うルートを滑ってみようかな」。予定通り到着できた安心感か、一瞬の気の緩みか、そう思いついた。

 通常ルートの少し東側でスキーをしてから元に戻ることにした。登りとは別の場所に入り、だれも通っていない新雪を滑った。10分ほどすると雪が激しくなって、周囲が真っ白になる「ホワイトアウト」が起きた。方向感覚も平衡感覚も失った。元の道を目指して、あたりをさまよった。午後3時ごろ、雪の上に誰かがスキーで滑った跡のようなものを見つけた。

 「助かった。これを伝っていけば、下山できるはずだ」

 日が沈んで暗くなり、判断能力も落ちていた。「迷ったら、まず登れ」という登山の鉄則を忘れ、ヘッドライトを頼りにスキーの跡を追って下った。そして、がけから5メートルほど滑落した。

 

 

幻視も…「もう限界だな」

 2011年1月、長野県北部にある白馬山麓(さんろく)の天狗原(てんぐはら)から下山しながらバックカントリースキーをしていた名古屋市守山区の会社員宗近栄治さん(43)は、激しい雪で道に迷い、がけから落ちた。

 高さは5メートルほど。幸い、新雪がたまっていて、けがはなかった。日が沈んで周囲は真っ暗。「動くと危ない」と判断した。

 体温を奪われないよう、リュックにあった簡易テントをその場で頭からかぶった。体の周りに雪が積もり、スノーショベルでかき出しながら夜明けを待った。

 予約していたふもとの民宿は、宗近さんが宿に到着しないのを心配していた。午後8時ごろ、地元の大町署に連絡した。

 翌日も雪はやまなかった。宗近…

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