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 ジメジメした季節、じっとり汗をかく時期です。小児科外来では、保湿剤をもらいに来る子への処方が、軟膏(なんこう)やクリームタイプからローションタイプに変わる頃です。

 初めてのお子さんを育てるご両親から、「子どものいる部屋でエアコンって、使っていいんですか?」と質問されることがありますが、もちろん使ってください。除湿などの機能や、なんなら扇風機も必要に応じて使い、快適な環境にしてください。自分で動けない小さい子には、風が直接当たらないように気をつければ大丈夫です。

 以前、ネットの記事で「汗をかかない子になってしまうから、保育園ではクーラーは使わないように」と医師が言っているのを見て驚きました。汗をかくか、かかないかに練習は必要ありません。子どもは体温調節能力が大人に比べると低いので、真夏の最中(さなか)に蒸し風呂のような室内に長時間いた方が、熱中症になるリスクはより高くなるでしょう。水分・塩分が十分に取れなければ、命にも関わります。危険だと思いその発言を載せているサイトの運営会社に問い合わせたところ、その医師も汗をかけなくなるメカニズムの出典がわからないとのことで記事ごと削除されました。

 

 夏に多い皮膚のトラブルは何と言っても汗疹(あせも)です。汗疹は高温多湿の環境で、汗を出す管に汗がたまることによってできるもので、大きく分けて3種類あります。

 「水晶様汗疹」は、皮膚の表面に近い浅い層に汗がたまって透明な水疱(すいほう)ができるもので、すぐに消えます。かゆみや痛みはないので、涼しく清潔にしておけば何もする必要はありません。 「深在性汗疹」は、皮膚の深い場所に汗がたまってできますが、高温多湿の厳しい地域で見られるもので、日本ではほとんど見られません。 「紅色汗疹」が、皆さんが見慣れている汗疹。汗が皮膚の中層の真皮などにたまって炎症になり、赤いブツブツになります。子どもだけでなく、高温多湿の環境下で働く人、多汗症の人、太めの人の体幹、脇、太ももにできやすいものです。

 汗疹を掻(か)くことで細菌が入ってしまうと、「汗腺膿瘍」(かんせんのうよう)という腫れと痛みを伴うものができたり、水ぶくれやかさぶたができる「とびひ」ができたりします。皮膚科や小児科にかかり、抗菌薬の軟膏などを塗ったり、ひどい場合には抗菌薬を内服してかゆみと炎症を抑えましょう。

 私は長女が乳児の時、まだ小さいからクーラーはあまり使わないほうがいいかなと思い、エアコンをなるべくつけないようにしたり、つけてもすぐに消したりしていたことがありました。暑いのを我慢していると、すぐに汗疹は悪くなりますね。気持ち良く眠るためにも汗疹のためにも、室温調節は大事なのだと実感しました。病院では、新生児室、病室も一年中快適な室温にしています。赤ちゃんや病気の子に悪いなら、病院でエアコンは使うはずがないですもんね。

 

 アトピー性皮膚炎も、夏に悪化することが多い皮膚トラブルです。汗をかいたままにすることが症状をより悪くするので、汗をかいた時に可能だったらシャワーを浴びましょう。無理なら水道で汗を流す、汗を拭く、汗で濡れた洋服を取り替えるだけでもいいです。

 アトピー性皮膚炎の人が汗をかくと炎症を起こしている部分にしみるし、塗った軟膏が落ちてくるのも不快なので、運動や入浴を控えてしまう場合があるようです。しかし、汗をかかないように運動を控えている場合と、運動で汗をかいた後に流してスキンケアをし直すのとでは、後者の方が皮膚の状態がいいと言われています。汗は角質層に水分を与え、バリア機能を高めます。また汗には細菌から肌を守る物質が含まれています。子どもの成長発達に適度な運動は必要です。汗をかいたら速やかに流し、保湿剤を塗ってください。

 保湿剤が汗をかけなくするのではないかと心配する方がいますが、そんなことはありません。保湿剤は角質層に水分を与え、むしろ発汗を促すことがわかっています。子どもが大好きなプール遊びも、皮膚の状態があまり悪くなければぜひさせてください。塩素の入った水がしみて辛い場合は、皮膚科か小児科で治療しましょう。

 

 最後に、夏に多いのが虫刺されですね。子どもが蚊に刺されると、あまり掻いていないにもかかわらず、ものすごく腫れることがあります。真っ赤になったり、水疱ができたりすることもあり、「ストロフルス」と呼ばれます。蚊の唾液(だえき)に対する過剰反応なので、冷やしてあげたり、皮膚科や小児科で、炎症を抑えるステロイドの塗り薬をもらって塗ったりするとしだいに良くなります。蚊に刺された普通の皮疹は、市販の塗り薬や痒(かゆ)み止めシールでいいと思います。シールは掻き壊し予防にもいいですね。

 1個から数個と離れて刺される蚊と違って、チャドクガという虫も困りもの。幼虫が毒のある毛を持つ毛虫で、ツバキ、サザンカ、チャなどのツバキ科の植物にくっついています。直接、虫を触らなくても数十万から数百万本もある毒針毛が舞うので、洋服の中にも細かい赤い発疹がたくさん集まるようにできて痒いのです。市販の痒み止めを塗ってダメなら、皮膚科か小児科でステロイドの塗り薬やかゆみ止めの内服薬をもらいましょう。

 

 ◇次回は、7月18日(月)に掲載予定です。

 

<アピタル:小児科医ママの大丈夫!子育て>

http://www.asahi.com/apital/column/daijobu/(アピタル・森戸やすみ)

アピタル・森戸やすみ

アピタル・森戸やすみ(もりと・やすみ) 小児科医

小児科専門医。1971年東京生まれ。1996年私立大学医学部卒。NICU勤務などを経て、現在はさくらが丘小児科クリニックに勤務。2人の女の子の母。著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(内外出版)、共著に『赤ちゃんのしぐさ』(洋泉社)などがある。医療と育児をつなぐ活動をしている。