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 先月、聖路加国際病院と国立精神・神経医療研究センターなどの研究チームが英科学誌に発表した、幼児の昼寝に関する論文が大きく報道されました。

幼児期早期の昼寝は夜の睡眠に影響することが明らかに(http://www.luke.ac.jp/home/pdf/pr20160609.pdf別ウインドウで開きます

 

 「幼児は昼寝が長過ぎると夜更かしすること」は、経験的に知られてきましたが、それが科学的に証明されたのです。

 この研究では、1歳半の幼児50人が対象で、1週間、睡眠の長さや時間帯を調べました。その結果、昼寝が長かったり、昼寝から目覚める時刻が遅かったりすると、夜間の睡眠が短くなり、就寝時刻も遅くなることがわかりました。その結果、寝不足や昼夜逆転などの生活リズムを乱してしまうとのことでした。

 

 日本の赤ちゃんは、世界でも有数の遅寝、短時間睡眠で知られているのをご存じでしょうか。また、夜泣きする赤ちゃんは、なぜか世界の中でも日本に集中しているのをご存じでしょうか。

 日本の赤ちゃんや子どもの睡眠の質を上げることで、子ども自身の心身の健康だけでなく、保護者の生活のゆとり、精神的なゆとりも確保できるかもしれません。

 

 今回は、2013年にこちらで連載した「赤ちゃんの夜泣き」についての記事を、再び2回にまとめてご紹介いたします。この連載は、当時好評いただいて、夜泣きに悩む保護者の方々からの反響が多くありました。過去記事としての掲載期間が終了しており、閲覧できなくなっていましたので、こちらにまた紹介させてください。

 私もかつて夜泣きで苦しんだ一人。息子が生後6カ月のころから始まった夜泣きは、1歳を過ぎても続き、ひどいと一晩に10回も起きて泣くので、そのたびに授乳をしてフラフラになる日々を送っていました。

 夜泣きは、「忍耐」だけが答えではありません。複数の選択肢から、お母さんたちが自分たちらしい対処法を選べるように、願って書いた連載です。

 

 (以下、2013年に連載したシリーズ「赤ちゃんと母親を考える」からの抜粋《前編》です)

 

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 赤ちゃんがなぜ夜泣きになるか、ご存じですか?

 新生児に昼夜の区別のないことは、よく知られています。育児書によれば、夜に寝て昼間に起きるというリズムがついてくるのは、生後3~4カ月を迎える頃。一般に、生後6カ月までには、しっかりした生活リズムが身につくと言われています。

 

 一方で、生後6カ月を過ぎても、夜中に何度も目を覚まして泣く赤ちゃんもいます。

 生活リズムを整えて、運動量を増やして、十分に子どもと触れ合って安心感を与えていても改善しない…。そんな夜泣きの大きな原因は、実は「寝かしつけの習慣」にあるといわれています。

 

 赤ちゃんを寝かしつけるための方法は、数多くあります。だっこや、授乳、体をとんとんしてあげる、暗くしたり静かにしたりして部屋の環境を整える…などなど。これらは、日本でごく自然に用いられてきたやり方でしょう。

 しかし、これらのうち「寝る環境を整える」以外の方法は、実は国際的に、子どもを寝かしつける際の「不適切な条件付け」と言われています。

 

 もちろん、多くの赤ちゃんにとって、これらの方法は夜泣きの原因とはなりません。これらの寝かしつけ方がお母さんにとってラクで、朝がくるまでの間に赤ちゃんが1~2回しか目覚めないのなら、そんなに問題ではないのでしょう。

 しかし、これらの「不適切な寝かしつけ」ではどうしても夜泣きしてしまう赤ちゃんが、一定の割合でいるのです。まさに我が子がそうでした。

 

 なぜ「不適切」になるのでしょうか?

 実は、こうした行為を通じて、赤ちゃんは「夜中に泣くと必ずおっぱいがもらえる」「夜中に泣くといいことがあるぞ!」と学習してしまうのです。

 夜泣きのメカニズムを図に表してみると、こうです。

 

 赤ちゃんが、夜中に目を覚まして自力で眠れないとき、「泣くと、お母さんが授乳してくれる」というパターンを学習すると、次に夜中に目を覚ましたときに、授乳を求めて泣きやすくなるのです。

 しかも、「泣く」という行動(B)の後に、①なるべく間髪いれずに素早く、②毎回必ず、「授乳」という結果(C)が与えられると、より学習は強力に進みます。つまり、「赤ちゃんが夜中に泣いたら、すぐ、毎回授乳する!」ということをしていると、夜泣きをばっちり促進してしまうというわけです。

 

 ああなるほど、なるほど。多くの日本のお母さんが、赤ちゃんとお父さん、お母さんとで寝室を共にしていることが多いでしょう。そうしたときに、お母さんはお父さんを起こしてはいけないとか、近所迷惑になるといけないから、という気遣いで赤ちゃんが泣き出すと、その瞬間に授乳をしているかもしれません。まさにその気遣いが、夜泣きの学習を完璧に促進していたのです。

 

 それではどうしたら夜泣きは改善するのでしょうか?このお話は次回に続きます。

 

<アピタル:上手に悩むとラクになる・その他>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/nayamu/

中島美鈴

中島美鈴(なかしま・みすず) 臨床心理士

1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。