[PR]

 日本脳炎患者が、2015年に千葉県で報告されました。県内では、25年ぶりだそうです。

 日本脳炎という病気は、日本では1966(昭和41)年には年間で2017人も患者が出て大きな問題でした。1967(昭和42)年から子どもも大人も日本脳炎ワクチンを積極的に接種した結果、患者数が激減、以降も定期予防接種になったので、最近の患者数は年間一桁です。

 従来の患者さんは西日本に多く、北海道では、発症が見られないことから定期予防接種として推奨されていませんでした。しかし患者さんの報告が北上し、北海道出身者も当然それ以外の地域との行き来があることから、2016(平成28)年4月から北海道でも定期予防接種になりました。

 国内で見つかる日本脳炎は、コガタアカイエカという蚊が媒介することで感染します。日本脳炎ウイルスはブタの体内で増えます。ウイルスを持つブタを吸血した蚊がヒトを刺すことによって、ヒトにウイルスが入ります。ヒトからヒトへの感染はありません。そして、ウイルスが体内に入ったうちの100~1000人に1人しか発症しません。ヒトの体内ではそれほどウイルスが増えないんです。でも、脳炎になってしまうとけいれんや意識障害など症状が重篤で、致死率は20~40%、生存患者さんの45~70%に後遺症を残すことが知られています。

 予防には、不活化ワクチンが有効です。近年の日本脳炎と診断された患者さんたちは、ワクチンを受けていなかったことがわかっています。3歳になったら打ち始めるのが一般的ですが、日本小児科学会はホームページで、日本脳炎罹患(りかん)リスクの高い者に対する、生後6カ月からの日本脳炎ワクチンを推奨しています。日本脳炎流行地域に渡航・滞在する小児、最近日本脳炎患者の発生した地域、ブタの日本脳炎抗体保有率が高い地域に居住する小児は、生後6カ月からワクチンを接種することが推奨です。(https://www.jpeds.or.jp/modules/news/index.php?content_id=197別ウインドウで開きます

 お住まいの地域はどうでしょうか?確認してみてください。

 

 2014年に、日本では戦後初の国内感染でデング熱患者が発生したことは、大きいニュースでしたね。

 デング熱はデングウイルスにより起こり、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカが媒介します。そういった蚊が生息する赤道付近と南半球の熱帯地域に多い感染症。これもヒトからヒトへ直接は移りません。4種類の血清型があり、そのうちの一つの型にかかるとその型に対しては終生免疫が付きます。でも、残りの血清型に対しての免疫(交差防御免疫といいます)が数カ月で消えてしまうので、別の血清型のデングウイルスに感染することがあります。その際により重症であるデング出血熱になってしまう確率が上がると言われているので、血清型を確かめることと、1回感染した後はより入念に蚊の対策をしないといけません。

 私の友達でフィリピンに住んでいる人がいますが、現地では「デング熱に2回かかったら死んでしまう」と恐れられているそうです。すぐに死んでしまったりはしませんが、注意が必要ですね。

 デング熱は3~7日間の潜伏期間の後、発熱と激しい頭痛や関節痛、筋肉痛を起こします。発症3~4日後に体幹から始まる発疹が出現し、四肢と顔に広がります。1週間で症状が消え、後遺症なく回復します。デング出血熱は、デング熱と同様の経過の後、平熱に戻りかけた時に興奮状態となり、発汗し、四肢が冷たくなります。胸水や腹水が溜まり、点状出血が見られます。ショック状態を起こすことがあり、適切な治療がないと死亡することもあります。

 ワクチンはないので、予防方法は蚊に刺されないようにすること。治療法は解熱鎮痛剤(アセトアミノフェンのみ)や、点滴などの対症療法を行います。

 

 ジカ熱は、リオデジャネイロオリンピックのためにとりわけ話題ですね。デング熱もジカ熱もネッタイシマカ、ヒトスジシマカが媒介します。ブラジルで、妊娠した女性が感染することにより、子どもが小頭症になってしまった例が相次いで報告されています。日本国内での感染の報告はまだありません。

 デング熱と似た症状ですが、より軽く80%が不顕性感染。つまり8割が、自分がジカ熱にかかったことに気づきません。2~7日の潜伏期間の後に軽度の発熱、発疹、体の痛みなどが出て、1週間程度で治ります。対症療法としてはアセトアミノフェンの内服など。

 妊婦、妊娠の可能性のある女性は流行地域には行かないことが大事です。「ジカ熱に感染したことが確認された女性、症状のある女性は、発症から短くても8週間は妊娠を待つべき」、性感染症としてヒトからヒトへ感染するため「流行地域に行き、発疹や関節痛などの症状がある男性は、最短でも6ヶ月は避妊具を使うように」とアメリカ疾病対策センター(CDC)が勧告しています。 CDCの言う通りではありますが、生まれてくる子にとってもその家族にも小頭症かどうかというのはとても大きなことです。ジカ熱は不顕性感染が多いことを考えると流行地域に行った男女は、症状がなくても避妊具を使用したほうがいいと私は考えます。

 

 蚊が運んでくるこれらの病気はワクチンがあればいいのですが、日本脳炎ワクチン接種前の小さいお子さんや、ワクチンがない感染症は困りますね。薄い布地でなく目の詰まった袖や裾の長い服、虫除けで守りましょう。

 虫除けとして効果が認められている有効成分は、ディートとイカリジンがあります。従来、日本ではディート濃度は12%以下、イカリジンは5%以下のものしか販売できませんでした。2016年に厚生労働省の方針が変わり、それぞれ30%、15%まで認めることになりました。発売はまだ先かもしれませんね。

 ただ、アメリカのCDCは「生後2カ月未満の乳児にディートは使用しないこと」と言っています。現在の濃度のディートでも、年齢によって1日の使用頻度は制限した方が安全です。厚生労働省の勧告では生後6カ月未満の乳児には使用しないこと、6カ月以上2歳未満は1日1回、2歳以上12歳未満は、1日1~3回となっています。

 

【お知らせ】

 7月25日に、新しい本が出ます! 小児科医の私の他、医師や看護師、管理栄養士、歴史研究家、ジャーナリスト、大学教授や研究者など13人の専門家が、子どもにまつわる根拠のないデマを「斬る」本です。ぜひ、ご一読ください。

『各分野の専門家が伝える 子どもを守るために知っておきたいこと』(メタモル出版/宋美玄・姜昌勲・森戸やすみ・他10人著)(https://goo.gl/PLmfyK別ウインドウで開きます

 

◇次回は、8月1日(月)に掲載予定です。

 

<アピタル:小児科医ママの大丈夫!子育て>

http://www.asahi.com/apital/column/daijobu/(アピタル・森戸やすみ)

アピタル・森戸やすみ

アピタル・森戸やすみ(もりと・やすみ) 小児科医

小児科専門医。1971年東京生まれ。1996年私立大学医学部卒。NICU勤務などを経て、現在はさくらが丘小児科クリニックに勤務。2人の女の子の母。著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(内外出版)、共著に『赤ちゃんのしぐさ』(洋泉社)などがある。医療と育児をつなぐ活動をしている。