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 「最初の1時間が勝負」と言われる、大けがの治療。連載「患者を生きる ある日突然編」では今週、建設現場で転落し、大けがを負った大工の男性の闘病をご紹介しました。取材した記者が、取材を通して考えたことをつづります。 

 

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最初の1時間が勝負

 横浜市の住宅建築現場で転落し、大けがをした大工の鵜沢真治さん(66)を取材し、一時は心肺停止状態になった状況から命を救った救急医療の価値を改めて感じました。

 

 大けがの治療について救急医はよく「最初の1時間が勝負」と言います。けがから1時間以内に手術など必要な治療を始められれば、命が助かる可能性が高まります。

 

 「病院に着くまでに1時間」ではないことに注意が必要です。病院に着いてから、「今から外科医を呼び出します」「手術室の準備をしています」と時間を費やしていては間に合いません。

 事故現場から救急車で5分で行ける最寄りの病院に運んでも、手術の準備に90分かかっていては1時間を超えてしまいます。

 一方で、救急車での搬送に20分かかっても、到着後20分で手術を始められる病院に運べば命が助かります。これが、大量出血など大けがの患者は、外科医が常駐する外傷センターに集めた方がいいという考え方です。

 

 横浜市は市内2カ所の病院を市重症外傷センターに指定しています。鵜沢さんもセンターの一つ、済生会横浜市東部病院に運ばれ、転落事故からほぼ1時間で緊急手術が始まりました。

 肺や腎臓、脾臓(ひぞう)などが傷ついて大量出血していた鵜沢さんは、重症度などから計算された予測生存率は50%以下でした。生きるか死ぬかの厳しい状況から5カ月たった今、病院から自宅への復帰を目指してリハビリに励むまでに回復しました。

 

即座に判断、緊急手術 外傷外科医の集約を

 鵜沢さんの手術をしたのは外傷外科を専門とする医師でした。外傷外科医は普通の外科医と何が違うのでしょう。

 たとえば、日々、胃がんや大腸がんの手術をしている外科医が、大けがで内臓が傷ついた患者の緊急手術をすぐに上手にできるというわけではありません。周到に準備して、手順に従って丁寧に病気の部分を切るがんの手術と、救急車でいきなり運ばれてきた患者の状態を即座に判断しながら行う緊急手術とでは、求められる知識も技量も違います。

 同病院には外傷治療専用の手術室がありますが、特殊な治療機器を使うわけでもありません。命を救うのは外傷外科医らの力量とチームワークです。

 

 外傷外科医の人数は全国的にみても必ずしも多くありません。やはり、外傷センターに人材を集中して、治療に専念してもらうことが必要だと思いました。

 

 

◇ 患者を生きる「転落事故」の記事、全4回をまとめた【まとめて読む】を、明日掲載する予定です。こちらもご覧ください。

 

<アピタル:患者を生きる・ある日突然>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/(浅井文和)