大人のADHDの方の多くは、テレビや雑誌のお片づけ特集が大好きで、「どうにか自分も片づけなければ」と思いながらご覧になっています。お片づけの仕方はよくわかっている。憧れのインテリアについてもイメージを明確にもっている。なのに、なぜか部屋は汚いままなのです。
これはいったいどういうことでしょう。
片づけに踏み切れないパターンにはいくつかありそうです。どれに当てはまりますか。
①目標高すぎタイプ:
どうせお片づけするなら、家中をモデルルームみたいにしたい!こんなインテリアで、ひとつも安い家具なんて置かない。完璧に整理できる引き出しタイプの作り付けクローゼットが必要!
②すぐに結果が出ないと嫌なタイプ:
気が短いので、1日で終わりそうにないと無理。片付けって一度始めて、途中でやめると余計に散らかるでしょう。だから中途半端にするくらいなら、最初からしないね。
③女王様タイプ:
片付けなんて誰にだってできる価値の低いものに費やしている時間はない。私にはもっと重要な使命、やるべき大事なことがあるのだから。
④いつかどうにかなるさ他力本願タイプ:
これまでだって、部屋が片づかなくても生きてこられた。死ぬわけではないさ。そのうちいつかどうにかなると思う。誰かが片づけてくれそうな気もする。大丈夫さ。
⑤否認タイプ:
私は片づけができないわけじゃないの。時間がないだけ。忙しいのよ。やる気になればすぐに片付けくらいできるのよ。
タイプが分かれば、片付けを始めることのできない理由も明確になってきます。タイプ別対処法もご紹介します。
①目標高すぎタイプ:
「こんなインテリアにしたい」という明確なビジョンをもつことは大切です。これをあきらめて「生活必需品」がすぐに取り出せる程度の、便利だけどおしゃれではない部屋に目標を落とすことはやめましょう。目標が色あせて、一気にやる気を失いかねません。それよりは、場所を区切ってとびきりのインテリアに仕上げることをお勧めします。「まずは洗面所だけ」とか「チェストの上のこのコーナーだけ」というかんじです。
*イメージはそのままに、場所を区切って。
②すぐに結果が出ないと嫌なタイプ:
おっしゃるとおり。中途半端になって、結果が出ないとやる気が失せます。すぐに結果を出しましょう。そのためには、1日でやれてすっきりできる部屋の範囲を決めることです。この場合も同じく、「靴箱だけ」「傘立て周辺だけ」「リビングの本棚だけ」と場所を区切る方法が有効です。
また、細かい仕分けを要する整理よりは、ぱっとみてまとまって見える片づけ方に切り替えます。具体的には「ペン」「鉛筆」「万年筆」などを細かく仕切りのついたケースにしまい込むような綿密な整理ではなく、「筆記用具」BOXにどさっといれてしまいます。ぱっと見てまとまってみえますし、実際そのくらいのおおざっぱな物の配置にしておいた方が、キープするのも楽です。
*場所を区切って、ざっくりと片づけるBOXを使う。
③女王様タイプ:
女王様、お金にゆとりあれば、ためらわずに片付けのプロに相談しましょう。無理そうならば、たまにはシンデレラになって、ひたすら片付けしてみましょう。きっといいことがあります。
*自分が女王様だという幻想はもう捨てよう。
④いつかどうにかなるさ他力本願タイプ:
いったい、いつ、だれが部屋を片づけてくれるのでしょうか。この数カ月、いやこの数年、そんな誰かは現れたのでしょうか。現実を見てみましょう。自分一人が無理なら、実際に誰か手伝ってくれそうですか? 家族と一緒にすることも教育上も家族の絆を深める意味でも大切です。
*どうにかなるさは、どうにもならない。
⑤否認タイプ:
その「やる気」、何月何日何曜日の何時から出そうですか? 結果で示してみましょう!
*そろそろ問題を直視する時期です。
さて、いかがでしたか? 片付けを始めるきっかけにしていただければと思います。次回はもう少し具体的な方法と、ADHDが疑われる主婦サチコさん(40代女性)のその後をご紹介いたします。
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私が翻訳に関わった本ですが、読んでいて本当に興味深く、面白い本でした。
<アピタル:上手に悩むとラクになる・主婦の隠れたADHD>
1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。
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