[PR]

 高血圧症や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病の治療で医療機関に通わなければいけないのに、仕事が忙しく、ついつい受診が後回しになることがあります。そのうち薬が切れて飲まない(飲めない)期間が続くという人もいるでしょう。その中には「症状は変わらないから、薬だけ出してもらえると助かるなあ」と思っている人も多いでしょう。受診の負担を減らし、治療を続ける方法はあるのでしょうか。(アピタル編集部)

 

 厚生労働省が3年ごとに実施する「患者調査」の最新版(平成26年患者調査の概況)によると、高血圧症、糖尿病、高脂血症の患者数はそれぞれ1010万8000人、316万6000人、206万2000人とされており、いずれも前回の調査より患者数が増加しています。ご存じのとおり、これらの生活習慣病にかかっても最初は自覚症状がないため、気づかないうちに動脈硬化を引き起こし、脳卒中や心筋梗塞などの発症リスクが高まります。こうした重大な病気にならないよう健康診断などで生活習慣病が見つかったら放置しないで医療機関を受診し、きちんと管理していくことが大切です。

 生活習慣病の治療は「食事療法」と「運動療法」が基本になります。しかし、これらの生活習慣を改善するのはそう簡単なことではないため、しばらく取り組んでみて数値が改善しない場合は「薬物療法」が行われます。薬物療法の効果を得るには、医師から処方された薬を指示通りに長期間飲み続けることが必要で、そのためには定期的に医療機関に通院することが欠かせません。しかし、働き盛りの人たちの中には仕事が忙しいため、ついつい受診が後回しになってしまうことも少なくないようです。

 例えば、厚生労働省研究班が糖尿病患者を対象に受診中断について調べた研究(2014年発表)では、50歳未満の男性で仕事を持っている人に受診中断が多い傾向がみられたそうです。また、中断の理由で最も多かったのは「仕事(学業)のため、忙しいから」というものでした。ちなみに、この研究によると受診中断率は年8%と推定されています。

 

テレビ電話での診察が都市部でも解禁に

 このような状況に置かれた働き盛りの人たちが仕事と生活習慣病の治療を両立するための一つの方法として注目したいのが「遠隔診療システム」の利用です。これは、離れた場所にいる患者と医師をテレビ電話などの情報通信機器でつないで行う診療スタイルです。厚生労働省は1997年から離島やへき地の患者などを対象に医師が遠隔診療を行うことを認めていましたが、2015年8月に改定されたルールでは対象者や内容が拡大され、全国どこでも行えるようになりました。そのため、東京をはじめとする都市部においても遠隔診療に乗り出す診療所やクリニックが登場しています。

 初診については従来どおり対面診療を原則とすることが定められたので、遠隔診療は「再診患者」が対象となります。すでに遠隔診療に取り組んでいる診療所の医師によると、再診患者の中でも数年にわたって検査値などが変わらず症状が安定している人が利用するのが望ましいそうです。実際の診療手順は、診療所やクリニックによって多少異なりますが、患者が予約した時間に電話もしくはテレビ電話を使って、事前に患者がメールで送っておいた現況に沿って問診と診察が行われ、必要な薬が処方されます。診察にかかる時間は数分程度で、10分以上かかる場合は何らかの検査を必要とする状態なので、遠隔診療の対象にはならないそうです。

 処方薬の受け取りは、診療所やクリニックから患者の自宅に処方薬もしくは処方せんを送付するシステムとなっています。処方せんの発行の場合は、送られてきた処方せんを近くの保険薬局に持って行き、処方薬を調剤してもらいます。医療機関の中には連携している保険薬局に処方せんを送付し、患者の自宅まで処方薬を届けてもらう仕組みを作っているところもあります。2016年4月から電子処方せんの作成・交付・保存が認められるようになり、医療現場では遠隔診療に取り組みやすい環境が整備され始めています。

 

遠隔診療を利用するときの注意点

 気になる費用ですが、遠隔診療にも健康保険が使えます。そのため、通常の対面診療にかかる費用とまったく同じです。ただし、予約料が自費で必要になる医療機関もあるようです。支払い方法はクレジット決済を導入している医療機関がほとんどです。

 遠隔診療を利用するときに注意したいのは、症状や体調に大きな変化があったときは速やかに医療機関に出向き、受診することです。というのも、遠隔診療では必要な検査がその場で行えないので、異常に気づくのに遅れたり、診断するのに時間がかかったりする恐れがあるからです。このようなデメリットがあることを利用する人も十分に理解し、遠隔診療は対面診療の補助的なものだと位置づけるのがよいでしょう。したがって主治医と受診頻度について話し合い、生活習慣病の症状が安定していても、ときどきは対面診療で合併症のリスクや進行状態などをしっかり確認してもらうことをおすすめします。

 遠隔診療を行っている医療機関は少しずつ増えており、インターネットの検索を利用すると探せます。いずれにせよ、生活習慣病の治療は中断しないことが肝心です。

 

 次回は「この治療を受け続けても大丈夫?」について考えてみます。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

アピタル編集部より

 「ちーちゃん教えて!」シリーズは、私たちが暮らしの中で感じる医療・健康・介護にかかわる悩みや疑問について、医療ライター渡辺千鶴さんにアドバイスしてもらいます。隔週木曜日に新しい記事を配信していきます。

 

<アピタル:メディカル玉手箱・ちーちゃん教えて!>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/tamatebako/(アピタル・渡辺千鶴)

アピタル・渡辺千鶴

アピタル・渡辺千鶴(わたなべ・ちづる) 医療ライター

愛媛県生まれ。京都女子大学卒業。医療系出版社を経て、1996年よりフリーランス。共著に『日本全国病院<実力度>ランキング』(宝島社)、『がん―命を託せる名医』(世界文化社刊)などがある。東京大学医療政策人材養成講座1期生。現在、総合女性誌『家庭画報』の医学ページで「がん医療を支える人々」を連載中。