前回までに、大人のADHDの方が片付ける際のポイントをお伝えしてきました。
ポイントは、「義務だから」「怒られるから」といった理由ではなく、
① すぐに結果がでて(報酬は遅延せず)
② 目新しいもので(飽きない)
③ 誘惑の少ない環境を作り上げる(やっちゃだめなことを我慢する力は弱いから)
この3つが大切でしたね。前回は①について述べましたので、今回は②の「目新しいもので」について述べていきます。
さて、いざ部屋の片付けだと課題をつきつけられると、うんざりした気持ちになりませんか?私はなります。
反対に、テレビや雑誌で「お掃除特集番組」などを目にして、「そうか!換気扇掃除ってほんとはこんなに楽なんだ!」とか「○○を用いるだけで簡単にできるんだ!」とか今まで知らなかったお掃除の裏ワザを知ったときには、ちょっとだけやる気が出ませんか?
このやる気の源こそが、「目新しさ」なんです!
しかし通常、こういうワザを目にしたとしても、それが夜だったり、外出先だったり、忙しい時期だったりして、即座に実行しないのが現状かもしれませんね。そしてなんといっても「先延ばし」はADHDの方の得意技なのです。
今から掃除をなにがなんでもしなくちゃならない。
そのときに「ワザ」を教えてもらえたら、渡りに舟ですね。
そうなんです。ADHDの方のお片づけのポイントは、お片づけに着手する直前に、目新しい掃除方法を知ることなのです。
具体的には、
1)お気に入りのお片づけ本や雑誌特集を手元に用意する
2)パソコンの動画サイトでお片づけやお掃除の裏ワザを検索する
個人的には2をお勧めしています。いつでも旬な情報が得られるからです。目新しさでいえば、ネットほどタイムリーにブームに追いついているメディアはありませんね。
サチコさんの場合は、シャツのアイロンがけが最も面倒な家事でした。しかも、シャツは毎日使うもので、これがきちんと洗濯、アイロンをへて循環していれば、気分がよくなります。それに、しわくちゃのシャツの山でソファーを占領されずにすみます。
ためしに動画サイトで「シャツのアイロンがけ」というキーワードを入れてみました。
出てくる、出てくる。クリーニング屋のプロが教えるコツから、主婦が投稿しているものまでたくさんあります。脱水直後でアイロンがけするとよいとか、タオルを敷き込むとよいとか、手でしわをのばしてからがよいとか、とにかく裏ワザの宝庫です。
動画を見ていると、ついつい「あ!私もいますぐしてみたい!」と思ってしまいます。このタイミングを逃さずに始めましょう。
でそれでもやはりこれを毎日続けるとなると、目新しさはなくなっていきます。これにも挫折した人は、(前回も紹介しましたが)
3)そもそもアイロンがけのいらないシャツを着よう
ネットで「アイロンがけのいらないシャツ」と検索してみてください。形態安定加工シャツが多く売られています。麻のシャツなど、素材感を楽しむものにしてみても、アイロンがいらないのでいいかもしれませんね。
その他にも工夫の余地を探しましょう。これまでと同じ方法でうんざりしている家事に、少しでも新しいことをとりいれて、自分を飽きさせないのです。
ブームにのるのは最良の手です。おととしは米のとぎ汁、去年はクエン酸、今年は重曹。古くなったストッキングに、ゴム手袋、毎年のように年末大掃除の裏技でワイドショーは埋め尽くされます。毎年違うやり方で、あの手この手で自分を飽きさせないようにしましょう。そうして、やる気を出すのです。ホームセンターのお掃除グッズコーナーに行くとてっとり早いでしょう。
ここまではお掃除の方法やグッズの目新しさを紹介してきました。まだまだ方法はあります。
①お掃除を一緒にする「人」を変える
お掃除はひとりでするもの、と多くの人が思っています。家族を巻き込んで役割分担してとりかかるというのはどうでしょうか。また、同じようにお掃除で困っている友人がいれば、同じ日の同じ時刻からそれぞれのおうちで片付けをスタートさせてみてください。できればメールなどで実況中継をして励まし合いながらいかがでしょうか。Before-Afterの写真を送り合いながらというのも励みになるでしょう。(Beforeの写真を見せるのは非常に勇気がいることですが)
②お掃除をする「場所」を変える
お掃除は汚れている場所でしかできない、と多くの人が思っています。もちろんそういう掃除もあるでしょう。しかし、必要な書類とそうでないものの区別、パソコンのデータ整理、衣類の分別ぐらいなら、家の外でもできます。家の中で、ひとりでじーっと取り組んでも、なんの面白味もないものです。書類やパソコンなら図書館やカフェに持ち出して、気分を変えて取り組めます。衣類なら友達同士で持ち寄って、似合うとか似合わないとか、いらないならちょうだいよ、とわいわい言いながら分別できそうじゃありませんか?
プロにお願いするのも手ですね。最近はパーソナルスタイリストといって個人のお宅にお邪魔してクローゼットの中からコーディネートを考えてくれたり、似合わないものや似合うものを教えてくれたりするサービスもあります。そんなプロの方を家にあげられるほど部屋が片づいてない!と気にされる方も多いですが、それこそ片づける大きな理由になると思いませんか。
さあ、こうしてあの手この手で自分を飽きさせない工夫をしましょう。飽きっぽいことは、「だめ」と言われてきたかもしれませんが、逆に「ブームにとびついてやる気を出せる」のは強みです。そんな特性を利用していきましょう。
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今年も福岡市城南区保健所の企画で、うつ病予防講座が開催されます。
ご本人もご家族も専門職の方の参加もOKです。託児はありません。
グループワークで体験して学びます。
【日時とテーマ】
・9/9(金) 10:00~12:00 自分でできる認知行動療法<1>
・9/16(金) 10:00~12:00 自分でできる認知行動療法<2>
【場所】 城南区保健所2階会議室(福岡市城南区鳥飼六丁目1-1)
http://www.city.fukuoka.lg.jp/jonanku/shimin-c/kusei-shisetsu/jyonan-word_access.html
【定員】 先着50人
【講師】中島美鈴(臨床心理士)
【料金】 無料
【問い合わせ・申し込み】 城南区健康課 電話092-831-4209
市政だよりにも載せていただいております。web版もどうぞ!
http://dayori.city.fukuoka.lg.jp/40380
大人のADHDについて、もっと学びたい方のためのワークブックをご紹介します。
『成人ADHDの認知行動療法~実行機能障害の治療のために』
(メアリー・V・ソラント著、 中島美鈴・佐藤美奈子翻訳、星和書店)
前半は、大人のADHDの特徴や診断、理論、併存症に治療法、事例などが書かれている専門的な読み物です。
後半は、大人のADHDの集団認知行動療法用のテキストとリーダーズマニュアルになっています。ご本人がひとりで書き込みながら進めていくこともできますし、グループで使うこともできます。
計画的に物事を行えるようになったり、やる気を出す方法を学んだり、時間管理や整理整頓が行えるプログラムです。
私が翻訳に関わった本ですが、読んでいて本当に興味深く、面白い本でした。
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<アピタル:上手に悩むとラクになる・主婦の隠れたADHD>
1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。
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