アピタル・田辺有理子
皆さんは、日頃どんなことに怒っていますか。
怒っているときは、同じ出来事なら誰でも自分と同じように怒るだろうと思いがちですが、同じ出来事に遭遇しても、怒る人もいれば、怒らない人もいて、怒りのスイッチは人それぞれです。また、「怒っている」か「怒っていない」という2つしかないと思っている人もいますが、怒りには、段階や強さがあります。怒ったとしても激しく怒る人もいれば、少しイラっとする程度の人もいます。
今回は、怒りに対処する準備段階として、怒りを数値化する方法を練習しましょう。怒ったとき、その怒りに点数をつけます。怒っていない穏やかな状態を0、人生最大の怒りを10とします。
★ レベル0:怒っていない穏やかな状態
★★ レベル1から3:軽いイライラ、不快感
★★★ レベル4から6:まあまあ強い怒り
★★★★ レベル7から9:とても強い怒り、激怒。コントロールできる限界
★★★★★ レベル10:人生最大の怒り
この点数に厳密な基準はなく、主観的に「この前の出来事は5点だったから、その時に比べたら今回の出来事は3ぐらいかな」という程度です。イラッとしたら「この怒りは何点だろう」と考えます。
拡大する怒りを数値化
アンガーマネジメントでは、怒りを数値化する方法を「スケールテクニック」と言います。怒ったら点数をつける、それだけです。続けていくうちに、怒りを客観的に捉えられるようになります。「怒っている」と「怒っていない」の2種類しかない人も、怒った状態が「ムカつく」と「マジムカつく」の2段階しかない人も、点数をつけていくうちに、怒りの強さに段階があることがわかってきます。
例えば、3日前に人生最大10点の出来事があったという看護師のAさんの怒りを聞いてみたら、「夜勤明けで疲れて寝ていたら、仕事から帰ってきた夫に、夕食は?と起こされた」とのこと。このように怒りのスイッチが入ったとたんに、メーターを振り切って怒りが爆発してしまう人がいます。白と黒との両極端に捉えてしまうのかもしれませんが、白と黒との間にはグレーがあります。もっと言えば、白と黒との間にはたくさんの色があります。軽くイラッとする程度の怒りから激しい怒りまで、その幅があることを意識して練習すれば中間の点数をつけられるようになります。
怒ったときの行動や身体の変化も一つの指標になります。例えば、「一時的にイラッとしても、冷静に対応できる」ときはレベル1から3、「チッと舌打ちしてしまった」ときは4、「相手を怒鳴りつけてしまった」ときは6、「血圧が上がっている気がする、仕事が手につかない」ときは8ぐらいになっているなどです。自分の言動や身体の反応を分析してみると点数のつけ方が安定してきます。
怒りを客観的に分析できると、対処法の判断にも役立ちます。「軽くイラッとする程度ならやり過ごせる」、「中程度なら職場で表情や態度に出てしまうかもしれないから注意しよう」、あるいは「強い怒りで抑えられそうにない。爆発する前に一度離れた場所に移動してクールダウンしよう」というように対処を決めておくこともできます。
カチンときたら間髪入れずに怒鳴ってしまうような人は「何点だろう?」と考えるだけでも怒りをクールダウンすることができます。怒りに振り回されて、売り言葉に買い言葉の不適切な発言や、表情や態度に出てしまうなどの失敗を防ぐことができます。
職場の同僚や身近な人と、怒ったときに点数をつける方法を共通認識にしておけば、怒っている人がいたときに「いま何点?」と聞いたり聞かれたりするだけ、怒りの渦中から少し離れて客観的に捉えられます。それに仲間がいると、楽しみながら怒りに点数をつけ、客観的に怒りの程度を伝えられるようになります。
あなたのその怒りは何点ですか?
次回は怒りの出来事をさらに分解していきます。
▼参考:安藤俊介:アンガーマネジメント入門,朝日文庫,2016.
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田辺有理子さんの本が8月31日に出版されました。タイトルは「イライラとうまく付き合う介護職になる!アンガーマネジメントのすすめ」(中央法規出版、2160円)です。(詳しくはアマゾン:http://goo.gl/52wVqv)
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<アピタル:医療・介護のためのアンガーマネジメント・コラム>
http://www.asahi.com/apital/healthguide/anger/(アピタル・田辺有理子)
横浜市立大学医学部看護学科講師。大学病院勤務を経て2006年から看護基礎教育に携わる。アンガーマネジメントファシリテーターTMとして、医療・介護・福祉のイライラに対処するためのヒントを紹介する。著書に『イライラとうまく付き合う介護職になる!アンガーマネジメントのすすめ』(中央法規出版)がある。
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