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 演歌歌手の伍代夏子さん(54)は、人気上昇中の1994年にC型肝炎と診断されました。32歳のときでした。「仕事は休まない」という決意のもと、2009年にインターフェロン治療に踏み切りました。しかし、高熱や貧血などの副作用が出て、公演中も息切れやめまいに苦しみました。夫の杉良太郎さん(72)に支えられて1年半の治療を乗り越えました。「肝炎のことを知ってほしい」という思いから、今はコンサートやブログで検査の重要性などを伝えています。

2人なら「乗り越えられる」

 演歌歌手の伍代夏子(ごだいなつこ)さん(54)は、コンサートやブログの中で、呼びかけていることがある。

 「肝炎の検査を受けてくださいね。ひとごとではないんですよ」

 あでやかな着物姿と伸びのある歌声からは、病気を患った過去はうかがえない。だが6年前までC型肝炎の治療を受けていた。

     ◇

 1994年の初め。32歳だった伍代さんは、東京・歌舞伎町の新宿コマ劇場で初めての座長公演を控えていた。公演は1カ月にわたるため、「念のため」と都内の病院で健康診断を受けた。肝機能に異常が見つかり、医師から告げられた。

 「肝臓にウイルスがいました。あなたはC型肝炎のキャリアー(持続感染者)です」

 大きな病気をした経験はなく、信じられなかった。疲れやすい時はあったものの、忙しさのせいだと思っていた。感染経路として輸血などを説明されたが、心当たりはなかった。かつてどこかの医療機関でウイルスに汚染された器具を使われた可能性くらいしか、考えられなかった。

 「私が病気なわけない」と、詳しい医師のいる病院で、肝臓の細胞を採取して調べる肝生検まで受けた。しかし、診断は覆らなかった。放っておくと、肝臓がんになりかねない病気だと知った。

 C型肝炎はウイルスの遺伝子型でタイプが分かれる。伍代さんは当時治療の主流だったインターフェロンが効きにくい1型だった。

 体よりも公演のほうが気になった。「絶対に休むわけにはいかない」

     ◇

 デビューしたのは1987年。それまでは別の芸名で活動し、全国を回ってレコードを手売りするなど、下積み生活を送ってきた。ヒット曲に恵まれ、賞を獲得し、NHK紅白歌合戦に連続出場をしていた。病気がわかったのは、そんな頃だった。

 治療は副作用が強いうえ、完治できる保証がないことなどから、経過を見ることになった。月に1度通院して血液検査で肝機能の値をチェックした。

 「ウイルスはいつ暴れ出すのだろうか」。時限爆弾を抱えているような気持ちで過ごしていた。

 5年後、俳優の杉良太郎(すぎりょうたろう)さん(72)との結婚が決まった。婚姻届の提出を控え、杉さんに病気のことを伝えた。

 「私ね、治療していないけど、C型肝炎のキャリアーなの。うつすことはまずないと思うけれど……」

 C型肝炎は血液を介して感染する。夫婦間や母子間で感染することはまれだが、心配だった。

 杉さんの態度が変わることはなかった。「人生を歩いて行くパートナーなんだから、ふたりで病気と闘っていこう」。それが答えだった。

 伍代さんも「この人となら、どんなことも乗り越えられる」と感じた。

     ◇

 診断から15年たった2009年、改良されたインターフェロンが効果を発揮しているという情報を、杉さんが聞いてきた。「新しい薬が出て、よく治るらしい」

 従来と比べて効果が長いとされるペグインターフェロンの注射と、抗ウイルス薬のリバビリンを組み合わせた治療法だった。注射は週1回で、難治性の1型でも治る確率が高まったという。

 「これは勝算のある賭けだ」

 伍代さんは東京大病院(東京都文京区)を受診。主治医となった消化器内科教授の小池和彦(こいけかずひこ)さん(61)から「肝炎はそれほど進行していないが、経過が長く、そのままにしていると進行していくので治療すべきです」と勧められた。

 開始前に、副作用の説明を受けた。一般的に、ペグインターフェロンは発熱や倦怠(けんたい)感、関節痛などが出ることがあり、リバビリンは貧血になりやすいということだった。同年8月から治療を始めた。

 注射を打つ毎週木曜日は、なんとかスケジュールを空けた。地方公演で東京へ戻れない時は、滞在先の病院で注射を受けた。

 注射の後、必ず夜に39度台の熱が出た。徐々に下がって平熱に戻る頃には、次の注射の日がやってきた。めまいや貧血も起きた。それでも、いつも通りに仕事と家事をこなした。午後8時ごろには体力が尽きて起き上がれなかった。楽屋でぐったりと横になることもあった。

 「病気を治すためとはいえ、こんなにつらいなんて」

 自宅では杉さんが、熱でほてった伍代さんの体を冷まそうと、うちわであおぎ、足をマッサージした。苦しそうな寝顔を見ていると、「死んじゃうんじゃないか」と心配になった。

 しばらくすると、副作用は歌にも影響をもたらした。

 ◆キーワード

 <C型肝炎> C型肝炎ウイルスに感染して起こる肝臓の病気。だるさや食欲低下などの症状が出る。自覚症状がない場合も多い。治療しなければ慢性肝炎、肝硬変、肝臓がんへと進む可能性が高い。肝臓がん患者の約6割がC型肝炎ウイルスに感染しているという。国内の感染者は100万~150万人と推計されている。

 

弱る体、副作用との苦闘

 C型肝炎と診断された演歌歌手の伍代夏子さん(54)は、2009年から週に1回通院し、ウイルスの働きを抑えるペグインターフェロンの注射と、飲み薬のリバビリンを併用する治療を受けた。「仕事は休まない」と決めていたが、薬の副作用は想像以上につらかった。

 特に、夏場のコンサートは体にこたえた。貧血で目の前がゆらぐうえ、おなかに力が入らず息が吸えない。ふだんなら一息で歌うフレーズも、聴き手にわからないように、こっそり息継ぎを入れた。声質を保つことはできたが、体には負担が大きかった。

 見せ場となる衣装の「早変わり」のため、舞台裏を汗だくで走り回らなければならなかった。舞台の袖には、携帯用の酸素スプレーを用意した。

 「あと何曲だっけ……」

 それまで20曲以上を全力で歌っても疲れを感じたことはなかったのに、半分くらいで残りの曲数を数えるようになった。

 夫で俳優の杉良太郎さん(72)は「調子が悪いときは、少し楽しむくらいの気持ちのほうがうまく行く」と助言してくれた。優しく歌うことで体力を温存した。

 脱毛も気になった。髪がやせ、洗うとばっさり抜けた。「こんなに抜けたの」と手のひらにのせた髪を見せると、杉さんに驚かれた。髪の毛を逆立ててボリュームを出そうとしても、すかすかになってしまい、ウィッグを用意した。体重も減っていった。

 C型肝炎の治療では、血液中のウイルスを完全に排除することが目標となる。伍代さんの治療期間は1年間の予定だった。だが、最初の3カ月間の治療でウイルスが消失せず、当初の予定の治療期間だけでは再びウイルスが出てくる可能性が高かった。そのため、治療期間を1年半に延長することになった。

 「こんなに苦しんで、体もどん…

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