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 早期発見や治療のためには、主治医を中心としたネットワークを持つ医師との出会いが重要だと、日本糖尿病学会専門医・指導医である岩岡秀明さん(船橋市立医療センター代謝内科部長)は言います。忍び寄る糖尿病シリーズ(2型糖尿病)の最終回は、「糖尿病予備群や患者のための主治医選び」についてアドバイスをもらいました。(聞き手・岩崎賢一)

 

 糖尿病予備群でも糖尿病患者になってからも、主治医選びが重要になってきます。糖尿病専門医や内科専門医の資格を持つ医師を受診した方がいいでしょう。厚生労働省の統計では、日本には約30万人の医師がおり、主な診療科を「内科」と表示している医師は約60000人います。しかし、専門医の資格を持っている日本内科学会の総合内科専門医は約22000人で、日本糖尿病学会の糖尿病専門医も約5300人しかいません。また、インターネットで日本内科学会(http://www.naika.or.jp/nintei/seido/meibo/別ウインドウで開きます)や日本糖尿病学会(http://www.jds.or.jp/modules/senmoni/別ウインドウで開きます)のホームページを調べないといけません。

 ただし、内科を標榜しているいわゆる内科医の中には、もともと外科医や皮膚科、産婦人科だった医師も含まれます。血液検査はしても、尿検査はしない医師もいます。できるなら、糖尿病専門医を受診した方がいいでしょう。日本糖尿病学会のホームページ(http://www.jds.or.jp/modules/senmoni/別ウインドウで開きます)には、専門医の名前と勤務先の住所が出ています。糖尿病専門医なら、境界型であっても「急性心筋梗塞のリスクは2倍です」とまずきちんと説明します。

 問題は、境界型の血糖値の人は、糖尿病専門医のところまで受診しない場合が多いことです。まず、健診の結果を受けて自宅や職場の近くのクリニックに行くケースが多いと思います。そこの医師が、あなたにどう説明するかによって、あなたの10年後の健康を左右します。

 実は、境界型の人の方が、糖尿病や循環器の専門医を早く受診した方がいいとも言えます。境界型でも、その時点から合併症の治療は始めます。血糖値を下げる薬を使わなくても、脂質、血圧と禁煙、ダイエットについてはすぐに介入しないといけないためです。合併症の急性心筋梗塞のリスクがあるからです。つまり、リスクファクターをしっかり評価して、必要な治療を開始してくれる医師を探すということが重要です。

 

どこを受診するか

 30代、40代、50代の人は仕事をしている場合が多く、大学病院や大病院での受診は難しいです。これらの病院は、平日の夕方までしか外来診療をしていないためです。土曜日に診てくれるところというと、開業医か民間病院になります。その中で糖尿病専門医の医師がいるところを探すと、かなり絞られてしまいます。平日は、東京の場合、会社の近くで受診できるかもしれませんが、地方だとなかなかそれもできません。

 この前も、30代の患者が紹介されてきましたが、食後血糖値が350mg/dlあり、ヘモグロビンA1cが9%でした。昔なら、すぐ教育入院を1週間しなければいけないくらいです。私が「外来でやりましょう。平日に毎月通えますか」と聞くと、「土曜日以外は、無理です」といわれました。その日は「たまたま代休で受診した」と言います。私は、検査データを渡し、すぐに土曜日に診てくれる開業していてかつ信頼のおける糖尿病専門医を紹介しました。

 治療を中断してしまうのを避けるための医師選びには、土曜日や平日の夜に通院できるところに診てもらっているかというところも重要なポイントになります。

 今、教育入院ができる人は、70歳以上の仕事をしていない人が中心です。私が勤務する病院も教育入院のベッドがありますが、毎週2人ぐらいしかいません。ほとんどは外来で対応しています。

 月に1回、平日に休みがとれて通院できる人はまだいいと思います。実社会では、それさえもできない人がいっぱいいます。最近は、24時間やっているクリニックも出てきていますが、コンビニエンスストアではありませんので、やはりどのような医師が診ているかが重要です。平日夜間や土曜日に診てもらえる糖尿病専門医のクリニックはとてもニーズがあると感じています。

 

いい糖尿病専門医の見分け方

 糖尿病の専門医に主治医として診てもらいつつ、合併症がでてきたらそれぞれの合併症の専門医を適切に紹介してくれるかがポイントになります

 目なら眼科、歯周病なら歯科、心臓なら循環器科、ED(男性機能不全)なら泌尿器科といったように、幅広いネットワークを持っている糖尿病専門医のことです。

 ただ、ネットワークを持つ糖尿病専門医を、一般の人が探すことは難しいです。日本糖尿病学会のホームページで専門医を検索しても、そこまでの情報はありません。みなさんが暮らす地域ですごく評判のいい糖尿病専門医は、そのようなネットワークを持っている可能性が高いと思います。口コミ(評判)と専門医資格の両方が大事です。混んでいるところは、レストランと同じようによいところが多いと言えるかもしれません。

 もう一つ重要なことは、「糖尿病診療はチーム医療が大切」という点です。日本糖尿病療養指導士(CDE-J)の資格を持った看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士が常勤でいる医療機関を選びましょう。(日本糖尿病療養指導士認定機構:https://www.cdej.gr.jp/modules/cdej/index.php?content_id=2別ウインドウで開きます

写真・図版

民間療法に注意

 健康食品や特定保健用食品(トクホ)は世の中にいっぱいあります。よくあるのは、「これを飲めば血糖値を下げる」というものです。血糖値を大きく下げるものではないので、これだけ飲んでいればよくなるわけではないということです。

 民間療法に頼ったとしても、糖尿病専門医への受診は続けて下さいと言いたいですね。民間療法に頼ると、通院をやめてしまう人がいるためです。糖質制限すればインスリンをやめていいというような本に頼って、インスリン注射をやめて、血糖値が上がって具合が悪くなって運ばれてきた患者もいるからです。

 

ショック

 糖尿病と診断を告げると、「薬を一生飲み続けるんですか」とよく患者に聞かれます。ショックを受けますが、40代や50代になれば、普通に病気の一つもでてきます。血糖値がよくなって食生活が改善でき、体重を減らすことで薬を中止することもできます。

 ただ、今、80キロの人に「あと10キロやせて欲しい」と言って取り組むのは難しいでしょう。患者には、「薬を飲みながらでも適度に食べて、たまにならば、夜中にラーメンを食べてしまっても大丈夫ですよ」と言うことも伝え、「どちらが良いですか」と聞きます。ストイックに体重を減量して、食生活を改善して、薬をやめる人もいますが、現実はなかなか難しいです。無理な糖質制限食で体重を減らしても、リバウンドして病気が悪くなってしまう人もいます。

 半年ならできても、これは10年以上続けることですから薬の力も借りながら、適度な食事をして長生きしようというライフスタイルがよいと私は思います。

 

<アピタル:アピタル・オリジナル・医療>

http://www.asahi.com/apital/column/original/(岩崎賢一)

岩崎賢一

岩崎賢一(いわさき・けんいち) 朝日新聞記者

1990年朝日新聞社入社。くらし編集部、政治部、社会部、生活部、医療グループ、科学医療部などで、医療を中心に様々なテーマを生活者の視点から取材。テレビ局ディレクター、アピタル編集、連載「患者を生きる」担当を経て、現在はオピニオン編集部。『プロメテウスの罠~病院、奮戦す』、『地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン』(分担執筆)