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 今年も残すところ3週間ほどになりました。年末年始に帰省や旅行する人も多いと思います。その出先で「おねしょ」のことを心配しているお子さんもいるのではないでしょうか。治療が必要なおねしょのことを「夜尿症」(やにょうしょう)といいますが、今回は夜尿症のお話です。

 日本夜尿症学会の大友義之先生によると、小学生のうち、夜寝ている間に思いがけずおしっこをしてしまう子は6-10%弱です。本人もご家族も自分から言いたいことではないので、あまり知られていませんが、意外とおねしょをする子は多いのです。よくあることなのに、これまでは、小児科医や内科医、泌尿器科医によって治療方針に違いやばらつきがありました。研究が進み、2016年6月に12年ぶりに新しい夜尿症診療ガイドラインができました。標準的な診療や新しくなった治療の流れが示されたことで、これからはよりいい診療が行われていくと思います。

 子どもが小さい時には、おしっこは薄く、溜める膀胱(ぼうこう)の容量も小さく、しょっちゅう排尿するので、オムツが必要です。成長するにつれ、だんだん、おしっこを濃縮し溜めてから出すようになり、排尿のタイミングをコントロールして、日中にトイレでおしっこができるようになります。

 新ガイドラインは、「5歳以上で月に1回以上のおねしょが3カ月以上続く場合」を夜尿症と定義し、本人や保護者が夜尿に悩んでいる場合には治療を検討することを勧めています。夜尿の原因は、尿を濃くして量を少なくするホルモンが夜間に低下するため、尿が多くておねしょをしてしまう「多尿型」、尿量は多くないけれど、膀胱が成長途上であることから溜められない「膀胱型」、どちらの要因もある「混合型」などに分類されています。

 このほか、背景になんらかの病気があって、夜尿がある場合もあります。それを探るため、初診時に医師からいろいろなことを質問されます。水分の摂り方はどうか、昼間のおもらしがないか、夜尿症の家族歴、おねしょの頻度など。

 また診察で医師は、以下の点に気をつけます。身長・体重、またそのバランス、夜間睡眠時に無呼吸になることはないか、便秘の有無や下着にうんちがつくことがないか、背骨のお尻部分の様子、外性器の様子などです。受診の際には聞かれると思うので、母子手帳の成長曲線に身長・体重を記載したり、排便の状況やおねしょの回数など調べて書き留めておいたりして、答えられるようにするといいですね。

 どういうタイプの夜尿症かや、背景に何があるかを知ることによって、適切な治療ができます。

 

 治療ではまず日常生活の改善から始めます。水分を夕食以降は摂らないようにする、規則正しい生活リズムにする、夜間に起こさない、日記をつけて排尿の頻度と夜尿の量を知るなどです。そういったことをしても効果がなければ、「アラーム療法」といって水分を感知するセンサーを下着につけて寝る方法や、夜間に出るおしっこの量を減らしたり、膀胱容量(おしっこを我慢できる量)を増やしたりする薬を飲むといった治療法があります。

 おしっこが出てしまう前に起こせばいいんじゃないか、と考える人は多いのですが、おしっこを濃くして量を減らす抗利尿ホルモンは、夜間にぐっすり眠っている時にたくさん分泌されます。そのため、毎晩起こすことはよくないのです。

 それから、焦らないことも大事です。子どもの腎臓病と夜尿症の専門医である赤司俊二先生によると、夜尿症は、特に治療をせず自然に経過して1年後の治癒率は10-15%、治療して介入すれば50%が治癒するものの、それでも1年という期間がかかるのです。長い目で見てあげましょう。そして、お子さんを怒らないことも大事です。わざとおねしょしているわけではもちろんありません。排尿を失敗したと傷ついているのは何より本人です。

 この年末年始に旅行先や帰省先でのおねしょが心配だというお子さんには、次のようなことを試してみてください。夕方からは水分をあまり摂らないようにする(コップ1杯程度にする)。夕食は寝る2-3時間前までに終わらせる。一時的な対処法として、夜中にそっと起こす、パジャマのズボンは厚手で濃い色のものにする、紙オムツを使う、おねしょシートを使うなどがあります。夜尿症外来などに通っている場合は、今まで使って一番よく効いた夜尿症の薬を使うという方策があります。

 

 最近、「キュレーションサイト」と呼ばれるネット上の医療・健康情報を集めたサイトに医学的に誤った情報が載っていて、次々と閉鎖していることが話題になっていますね。こうしたまとめサイトや迷信で言われるようなおねしょの原因はまず嘘です。例えば、布でなく紙オムツだったからいつまでもおねしょをする、親の過保護のせい、子どもの自立心が足りない、1回叱ったくらいの心理的ストレスなどなど。正しい情報を知るには、専門家が監修していて、正確な情報が得られる以下のサイトが便利です。

 

●おねしょ卒業!プロジェクト(フェリング・ファーマ運営)

http://onesho.com/patient/別ウインドウで開きます

●夜尿症ナビ (KYOWA KIRIN運営)

http://www.kyowa-kirin.co.jp/onesho/別ウインドウで開きます

 おねしょの日記などをダウンロードできるページもあり、夜尿症について相談できる全国の医療機関も検索できます。

 患者さんや家族用のためのわかりやすい書籍には、「バイバイ、おねしょ!」(冨部志保子著、朝日新聞出版)があります。

 命に関わるわけではないし、成長とともにいずれ治ると思いながらも、悩む人が多いのが夜尿症です。今回の記事が解決のきっかけになれば幸いです。

<アピタル:小児科医ママの大丈夫!子育て>

http://www.asahi.com/apital/column/daijobu/

森戸やすみ

森戸やすみ(もりと・やすみ) 小児科医

小児科専門医。1971年東京生まれ。1996年私立大学医学部卒。NICU勤務などを経て、現在はどうかん山こどもクリニックに勤務。2人の女の子の母。著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(内外出版)、共著に『赤ちゃんのしぐさ』(洋泉社)などがある。医療と育児をつなぐ活動をしている。